「あるべき女論」を垂れる上司に反撃する方法 「女なら自分で弁当作れ」「早く結婚しろ」…

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この女性のように、職場でセクハラを受けた場合、どのように対処すればいいのでしょうか。養父知美弁護士に聞きました(以下、養父弁護士)。

まず、「女ならこうあるべき」といった性別の役割分担意識にもとづく言動によって、社員に不快な感情を抱かせることは、ジェンダー・ハラスメント(性差別的嫌がらせ)となります。一方、性的な言動によって社員に不快感を与える場合は、セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)となります。

男女雇用機会均等法上は、「性的」な性質を持たないジェンダー・ハラスメントは、セクハラには当たらないとされるものの、セクハラの原因や背景になるとして、なくしていくべきとされています(セクハラ指針・厚労告383)。

セクハラの「証拠」になるものは何?

業務に関連して行われたセクハラやジェンダー・ハラスメント(以下、「セクハラ等」)が原因で退職に追い込まれた場合、そのような発言をした社員だけではなく、会社に対しても、退職による経済的損失や慰謝料を請求することができます。

問題は、セクハラ等が原因で、退職に追い込まれたと言えるかですが、立証はそう簡単ではありません。また、セクハラ等にあたることを「言った・言わない」が争いになることも多いです。

スマートフォンなどで発言を録音できればいいのですが、それができなくても、セクハラ等の内容や、身体的・精神的な不調を具体的に記録しておく、医者にかかっておく(診断書やカルテが証拠になる)、セクハラ等の発言をする社員本人や会社に対してメールなどで抗議しておく、友人などに相談しておく(メールの文面などが証拠になる)とよいでしょう。

セクハラ等で悩んだ場合は、1人で抱え込まず、誰かに話すだけでも、気持ちが楽になったり頭が整理できたりします。相談できる人が周りにいなければ、弁護士に相談をしていただければと思います。

養父 知美(ようふ ともみ)弁護士
大阪弁護士会 法務省人権擁護委員。堺市男女平等委員会委員。認定NPO法人WAN(ウィメンズアクションネットワーク)理事
事務所名:とも法律事務所

 

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