標高2400メートルのエチオピアの首都アディス・アババ。ひんやりとする空気が漂う朝7時、市の中心部にあるナショナル・スタジアムでは集ってきたアスリートたちがトラックで真剣な表情で次々に走り込みを始め、トレーニングに汗を流す。
そのうちの一人で5000メートルの選手、21歳のセンベレ・テフェリはエチオピアの名門“連邦刑務所管理”クラブチームに所属。昨年8月の第15回世界陸上北京大会の女子5000メートルで銀メダル、世界クロスカントリー選手権の8000メートルでも銀を取った選手で今年8月5日に開幕するリオ五輪への出場も決まっている。エチオピア期待の星だ。
裸足で走って学校に通った
センベレはアディスから約400キロ南のオロミア州グジ村の出身。この地の標高は約2000メートル、ほとんどがエチオピアの典型的な小規模農家で、コーヒーなどを栽培して生計を立てている。センベレの父親もコーヒー、モロコシ、主食インジェラの原材料テフを育てる農家で、センベレは3人の妹と1人の弟とともに育った。
センベレは幼い頃は教科書を手に毎日往復2時間かけて裸足で走って学校に通った。家に帰ると親を助けるために水くみや羊の世話をする毎日だった。小学校の陸上大会で1位、地区の大会でも1位と、めきめきと才能を伸ばし、コーチにすすめられて15歳で学校をやめ、地元近くのスポーツクラブに所属、プロのランナーとしての人生を歩み始めた。当時の月給は最大で1000ブル(約5000円)。2012年にアディスに出てきて今のクラブと契約を結び、現在の月収は2200ブルになった。これに加えてスポンサーのアディダスから年俸が出ている。
「私にとって走ることは血だ」と、身長163センチ、体重46キロとアスリートらしい体つきをしたセンベレは話す。エチオピアの女性に典型的なシャイな性格だ。「人生に楽はない。仕事がなければそれも大変。走ることは私の仕事でもある。大会では勝つことしか考えていない」と言う。
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