「日本一」を決める舞台である日本陸上競技選手権で“4年連続2位”という悔しい思いをしたランナーがいる。早稲田大を卒業して、現在はナイキ・オレゴンプロジェクトに所属する大迫傑だ。
4年連続2位は、すべてのレースで優勝者との差が“1秒”前後という僅差だった。それが、今年の日本選手権では1万mと5000mの両種目で完勝。いずれも「ラスト勝負」で他の選手を圧倒して、リオ五輪代表を勝ち取った。
負け続けた大迫はなぜ勝てるようになったのか。熱戦を終えて、彼はこう言った。「昨年までとのいちばんの違いは精神的な成長です」と。大迫の4年間を振り返り、彼の“成長”と“強さの秘密”を探ってみたいと思う。
4年前は0.38秒差でロンドン五輪を逃した
4年前の日本選手権1万mは、4人の選手がラスト1周の勝負になだれ込んだ。バックストレートで佐藤悠基(日清食品グループ)がトップを奪取。最後の直線は佐藤と大迫が激しく競り合い、佐藤が逃げ切った。優勝タイムは28分18秒15。大迫は0.38秒届かなかった。
佐藤は残り300mのスパートを、ラスト100mからもう一段階切り替えができるように考えながら走ったという。一方の大迫は、「イメージどおりのレースができて、ラストは余裕もありました。でも負けは負け。秒差は関係ない」と悔しがった。このとき1万mでロンドン五輪代表に選ばれたのは佐藤のみ。キャリアの差が明暗を分けた印象だった。
3年前の日本選手権1万mは7人の争いでラスト1周を迎えた。バックストレートでトップを奪った大迫に佐藤が食らいつく。1年前のレースで大接戦を演じたふたりが逆の立場になった。しかし、結果は佐藤の“圧勝”だった。最後の直線で切り替えると、大迫を突き放す。佐藤が28分24秒94で3連覇。大迫は0.90秒差で敗れた。
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