陸前高田の復興を後押しするパソナ 地元出身の若者呼び込む就労支援事業
「生まれ育った被災地の復興を担う人材になりたい」
地元を離れて仕事に就いていた若者が、東日本大震災を機に生まれ故郷に戻って再就職をめざす動きが巻き起こり始めている。
東京・新宿の髙島屋の食品売り場では現在、岩手県陸前高田市に本社を置く「きのこのSATO販売」(佐藤博文社長)が販売会を開催している。買い物客でにぎわう売り場で、笑顔を振りまきながら、しいたけの試食を勧めているのが安倍直之さん(26)だ。
陸前高田出身の安倍さんは、大手人材派遣会社パソナが同市から受託した「就労創出支援事業」の派遣社員として、きのこのSATO販売で働いている。現在は研修中の身分だが、本人が希望したうえで会社のニーズとマッチした場合には、4月以降、正社員としての雇用の道が開けてくる。
震災で一念発起、故郷の復興に尽力
震災前、大手タイヤメーカーの営業マンとして山形県内で働いていた安倍さんは、祖母を見舞うために地元に帰る途中の国道45号線のトンネル内で大地震に遭遇。命に別状はなかったものの、津波が押し寄せる光景を目撃したうえ、実家も津波で失った。
震災が起きた直後はアクションを起こす機会はなかったが、1年半近くが過ぎた昨年8月、たまたま見た新聞で見つけたパソナの広告に引かれて、就労創出支援事業に応募。今では地元企業の貴重な戦力として活躍している。もともと震災前から、「いつかは故郷の役に立ちたい」という思いを抱いていたが、震災から立ち直ろうとする故郷の姿が、安倍さんの思いを後押しすることになった。
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