親の離婚を子が「消化する」ための絶対条件 面会交流の現場で置き去りにされがちな視点

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ケース① 父(35)、母(37)、娘(5)
娘が2歳の時に離婚。娘は母に引き取られた。父が面会交流を求めて調停を起こした結果、裁判所の指示で、いわゆる「お試し」の「試行面会」を行うことになった。
父と顔を合わせたくない母に代わり、母の母、つまり娘の祖母が娘を連れてファミレスに現れた。しかしせっかくの面会も、1時間のうち55分間、祖母が父を罵倒して終了。次の面会も似たような調子で、娘は「新しいパパがいい」と発言(後日、これは母と祖母から言わされたセリフだったと判明)。試行面会は行き詰まり、裁判所の指示で、第三者機関を頼ることになった。
母親からの依頼で「ウィーズ」が仲介して面会交流を行うことに。ところが今度はウィーズの担当者が母と祖母の攻撃対象に。担当者は娘の意向を確認したうえで父に引きあわせたにも関わらず「子どもが会いたいと言っていないのに面会交流をさせるということは、あなた、向こう(父)の肩を持ってますよね? 中立なんじゃないんですか?」と、怒りをぶつけて来た。
このやりとりを聞いていた娘は、母と祖母に同調してしまい「ウィーズのお姉さんが怖い」と言い出してしまう。

 

ここから分かるのは、たとえ「ウィーズ」のような第三者機関が仲介したところで、関わる親や祖父母側に意義を正しく理解し協力する姿勢がなければ、本来の面会交流は実現しないということです。大人たちの感情がむき出しになり「そもそも嫌いで別れた相手に、なぜ子どもを会わせなきゃいけないの」という怒りが渦巻いてしまいます。

担当者を恫喝した父親が、2回目の面会交流で一変

一方で、以下のように、当初は当事者である親が理解してくれず、説得、説明を試みて何とか本来の面会交流にこぎつけたケースもあります。

ケース② 父(48)、 母(46)、小学生の娘と息子は母と同居
夫のモラハラで離婚。面会交流をするように裁判所の指示を受けたが、元夫と顔を合わせると、妻はじんましんが出てしまうので、「ウィーズ」に仲介の依頼が来た。
父は当初「ウィーズ」を、「元妻が選んだ機関だから、元妻の味方に違いない」として、敵意をむき出しにしてきた。子どもたちも、同居していた頃、母親に暴言を吐く父親の記憶があり「父は怖い人」という意識を持っている。
初めての面会交流はミニ遊園地で1時間。しかし現れた父親は開口いちばん、「面会交流中だから、後ろに下がっていろ!」と担当者を恫喝。しかし面会交流中は職員が付き添うのが原則。子どもたちも緊張してしまい、気まずいまま1時間が終わった。
それでも終了後、子どもたちは「疲れたけれど、お父さんとはまた会う」と言ってきた。そこで担当者は支援を続けることにし、その上で父親に「子どもは会いたくないとは言っていないが、私が付き添いできないなら、団体としてはもう面会交流の支援はできない」と申し入れると、父親は謝って来た。
「自分も初めてなので、感情をぶつけてしまって申し訳なかった。何とか続けていきたいから、お願いします」。2回目の面会交流には、父は笑顔で登場した。子どもたちも楽しそうだった。

 

ウィーズの光本さんは、面会交流を「親と子、一対一の関係をつくりあげていく作業」だと言います。「誰かのフィルターを通すのではなく、直接コミュニケーションとることで、子どもたちは『離れて暮らすお父さんやお母さんがどのような人なのか』を知ります。大人の都合や感情でイメージを壊したり、植え付けてしまったりしてはダメなんです」

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