住友大阪セメントがレアメタル不要の電池材 特需後にらみベトナムで育成

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セメント特需一巡後へ新材料強化

住友大阪セメントは、新事業のタネを探すため、ナノ粒子の研究開発に没頭したきた。10年前には千葉県・船橋市に「ナノ・テラ技術センター」を設立。ここに2次電池材料事業推進室を置き、正極材料を育成してきた。

同社の新材料部門は、前12年3月期実績で部門売上高が101億円、部門営業赤字が1億円。採算が悪いのは、PDP用光学フィルターの不適切な会計処理問題(11年12月に発覚)が影響したためだ。

ただ、PDP用フィルターについては需要が急減したことから、12年中に撤退を決断。その穴を埋める新しい切り札として、ベトナムでの正極材生産に成長の可能性を懸けることにした。新材料部門は、PDPの撤退で従来品の採算こそ改善したが、ベトナム投資の負担を補うところまではいかず、全社的な収益貢献はまだ小さい。

一方、本業のセメント事業も、足元の好況が長続きすることは期待しづらい。大震災からの復興需要や防災・減殺への公共事業強化策が一巡すれば内需は急減して、元の年間4000万トンに戻るとの見方が大勢となっている。

来14年3月期はそうしたセメント特需が住友大阪セメントの業績成長をまだ支える可能性が高い。が、特需の一巡後も同社が成長を維持できるかどうかは、ベトナムで進めている正極材など新材料部門の育成が左右することになりそうだ。

古庄 英一 東洋経済 記者

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ふるしょう えいいち / Eiichi Furusho

2000年以降、株式マーケット関連の雑誌編集に携わり、『会社四季報』の英語版『JAPAN COMPANY HANDBOOK』、『株式ウイークリー』の各編集長などを歴任。

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