遠藤功「Made in Japanにこだわる日本電子」 ニッポン中堅企業の秘めたる爆発力

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2008年に就任した栗原権右衛門社長は退路を断ち、思い切った構造改革を断行した。500人規模の人員削減により約40億円固定費を圧縮。また、関係会社5社を本社に統合し、組織の一体化を目指した。

その一方で、大括りだった事業単位を意思決定・実行の迅速化、責任の明確化を狙って、8つの事業ユニットに再編。その長には執行役員クラスを抜擢した。

オープンで風通しの良い組織に

一方、栗原社長は社内の風土改革にも着手。真面目で、コツコツ頑張る社員は多いが、逆に内向き、引きこもりのようになってしまっていた。オープンで風通しのよい組織に変わらなければ、自社の強みも活きないと考えたのだ。

まず、着手したのが経営会議。肩肘張っていた役員たちに、「もう強がりはやめよう。たまには、泣き言を言ったら」と本音で話すことの大切さを伝えた。

社内でも色々な変化が生まれ始めた。社員たちが部門横断的な取り組みで「社内新聞」の発行を始めた。その内容は社員が社員にインタビューしたり、漫画好きな社員が4コマ漫画を描いたり、手作り感満載である。会社のことが「分かる」だけでなく、「好きになる」ことを狙ったこの「JEOL TIMES」は社員たちに大好評だ。

こうした様々な施策による改革が身を結び、今期は業績面でも目に見える成果が表れ始めている。12年度の決算予想は、売上高805億円、営業利益30億円を計画。ここ数年、負の遺産の処理として特別損失を計上せざるをえなかったが、今期は当期利益でも20億円を見込んでいる。

これだけの超円高環境でも、日本でのものづくりにこだわり、これだけの利益を上げることができるというのは、地力の証明以外の何物でもない。超円高傾向が少し緩み、さらには政権交代によって科学振興のための補正予算も見込まれ、日本電子にとっては追い風が吹きつつある。V字回復はけっして夢物語ではない。

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