ドル安加速し95円へ、一方でユーロは底堅い 「EU分裂」よりも「大英帝国分裂」に現実味

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離脱が与える英国経済への影響に関しては、直感的に、対英直接投資の減少、対英証券投資の減少は不可避と思われる。

仮に、EUから離脱して、なおかつ欧州経済領域(EEA)や欧州自由貿易連合(EFTA)からも距離を置く場合、英国は現在享受している共通関税や単一市場ルールに絡んだメリットなどを喪失することになる。EUから離脱しEEAにも加盟しないことは、税制面でメリットを感じていた民間企業が、英国から流出する誘因となる。

金融機関は拠点の再考を迫られる

ポンド円は160円からのつるべ落とし

また、域内金融機関に認められてきた単一ルールが適用除外になることも大きな影響を与える。1993年1月以降に域内金融機関に認められてきたユニバーサルバンキング・ルールやシングルパスポート・ルールなどが適用されない道を、離脱後に選んだ場合、英国における許認可をベースとしてEUで業務展開していた金融機関は拠点の再考を迫られる。

そのような金融機関はEU加盟国いずれかに業務を移管し、そこで許認可を再取得すれば再び単一ルールが適用になるため、やはり予想されるアクションは「英国からの脱出」ということになりそうである。

また、既に大手格付け会社が離脱を受けて格下げの意思を表明しているように、EUから離脱すれば、もとより巨額の双子の赤字(財政赤字&貿易赤字)を抱える同国の資金調達を巡って、不安が高まる可能性が高い。こうした動きは英国の金融機関の資金調達コスト上昇に直結し、国際金融市場の大きな懸念材料となり得る。

なお、火種はまだある。2年前に独立を賭けた国民投票で市場を賑わしたスコットランドは英国の離脱が決まった場合、住民投票を再度行う方針を明らかにしているし、北アイルランドも同様の意思表明をしている。EU分裂よりも大英帝国分裂のほうがよほど現実的に心配されるリスクだ。

これらに比べれば瑣末な論点ではあるが、残されるEU27か国にとっては、EU4大国の一角をなす英国が抜けることで、その他の国への予算負担が増すなどの論点はあり得る。

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