被害額54円…「万引き老人」の悲しすぎる現実

「貧困」と「孤独」が支配する絶望社会とは?

金額がいちばん少ない事件は、被害金額54円。その悲しい現実とは?(写真:ケイ / PIXTA)

老人の万引きが増加しているというのは聞いたことがあった。しかし、まさか、ここまでとは思っていなかった。『万引き老人』の読後感だ。驚いただけではなく哀しくなってしまったが、こういう現実を直視せずに現代社会を論じることはできないはずだ。

あちこちのスーパーに出向く保安員、現役の万引きGメンによって書かれた実録集である。20件あまりの事例が紹介されているが、それぞれに、あきれるような、腹立つような、そして、泣きたくなるようなドラマがある。

被害金額54円

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金額がいちばん少ない事件は、被害金額54円。売り場にあったコロッケを半分食べてしまった老人による万引きである。やせこけた81歳のホームレス男性が、ひもじさに負けて、店内でぱくっとやってしまったのだ。所持金はゼロ。

「ごめん、一銭もない…」と語る老人に名前を書かせても、波打っていて読めない。生活保護を受ければいいのにと諭しても、金に困った時に高利貸しに売ってしまったので戸籍がないという。被害額も少ないし、どうしようもないので、二度と店に来ないことを条件に放免となる。

なのに、その老人が数日後に舞い戻ってきた。そして、コロッケとメンチカツをパックにいれる。すわ再犯かと気をもんだところ、きちんと支払いをしてくれた、と安堵する。その内容にもかかわらず、決して殺伐とならずに読み応えある本になっているのは、著者である伊東氏の、このような厳しくも人間味あふれる観察眼だ。

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