なぜ新聞は「紙」でないと儲からないのか? ニューヨーク・タイムズの苦境(下)

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リストラ続きのニューヨーク・タイムズ。デジタル版の読者は順調に伸びているが、収益は改善していない(写真:AP/アフロ)

 デジタル版の読者は増えているが……

前回のコラムでは、紙ビジネスの衰退に苦しむ、高級紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)の状況を描いた。今回のコラムでは、ニューヨーク・タイムズ・カンパニー(NYT社)が局面打破のために打ち出している戦略を、デジタル分野を中心に説明していこう。

2011年3月、NYT紙は、英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)、米ウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)の成功にならい、デジタル版を有料化した。一部には、課金モデルへの移行により読者離れをおそれる声も強かったが、実際には、有料購読者数は順調に増えていった。

課金モデルへの移行から1年余りが経過した時点で、このことがわかると、他メディアは一斉に、「ペイウォール(課金の壁)をもう恐れる必要はない」(『ニューズウィーク』誌など)と報道した。

NYT社が12年7月に発表した12年第2四半期のデジタル有料購読者数は、53万2000人。当初の目標とされた50万人を突破した。四半期ベースで見た有料購読者数の推移は、次のようになっている。

・2011年第2四半期:28万1000人

・2011年第3四半期:32万4000人

・2011年第4四半期:39万人

・2012年第1四半期:47万2000人

・2012年第2四半期:53万2000人

 見てわかるとおり、有料購読者数は堅調に増え続けている。誰もが危惧した、課金すると読者が逃げるという業界最大の恐怖は、少なくともNYTデジタル版においては杞憂に終わったわけだ。

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