善意が暴走するPTAと町内会は変われるか 数々のナゾに挑戦する2人に聞く

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紙屋:区は「やらせたい」と思っているから、「やってもやらなくてもいいですよ」という任意性を、はっきり言いたくないんですよね(苦笑)。

自主的に選んでいる、という体裁を取らされてしまう

山本:そうそう、そうです(苦笑)。

あともうひとつ、「体育館開放」というのもやめました。これも休みの日などに体育館を地域の人に開放するという事業で、自治体によってはスポーツ推進委員の人や、町会の人がやるんですけれど、うちの地域では、なぜかこれをPTAがやっていました。

日当が1人2千円くらい出るので、自分も卓球やバドミントンを楽しみながら当番をする、という人はいいんです。でも、その日当を区から預かって、その人たちに手渡ししたり、書類を作ったりするのは、PTAの役員の仕事だった。「それ、大変だよね?」と聞いたら「大変です」とみなさん言うので、学校や町会に相談して、やめることにしました。

紙屋:その仕事はみんな、納得いかなかったでしょうね。

山本:ええ。しかも、利用者の半分以上は学区外の人だったんですよ。体育館開放に来た人は住所を用紙に記入していくので、それを分析してみたら、PTA会員の利用者は半分もいなかった。

そもそも区の施設としての開放業務なので、PTAがやらなきゃいけないのはおかしいですよね。これも職員の人は「いやいや、PTAでずっと続けて欲しい」みたいなことを言っていたんですけれど。

でもやっていない学校もすでに半分くらいありましたし、やめました。

紙屋:それも、すごいお話ですね。町内会はよく、行政から「こういうのは大事ですよね?」というふうに仕事をやるように言われるんですけれど、逆らいづらいんです。「防犯って大事ですよね?」「地域の見守りって大事ですよね?」と言われると、「大事ではありません」とは言えませんから、引き受けざるを得なくなる。

そうすると「自主的にその人(その町内会)が選んでいる」という体裁を取らされてしまう。そういうことが、すごく多いです。

PTAも町内会と同様に、本来は関係のない仕事に巻き込まれないよう、気を付ける必要があるでしょうね。ただでさえ仕事の担い手が少なくて、苦労しているのですから。意欲や担い手があれば、どんどん引き受けていい。でも、無理な時はきっぱり言う。言えるしくみもつくる。行政もそういう団体・個人が出てくることを前提に依頼をし、またそういう制度設計をすべきです。

大塚 玲子 ノンフィクションライター

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おおつか れいこ / Reiko Otsuka

主なテーマは「いろんな形の家族」と「PTA(学校と保護者)」。著書は当連載「おとなたちには、わからない。」を元にまとめた『ルポ 定形外家族』(SB新書)のほか、『さよなら、理不尽PTA!』(辰巳出版)『オトナ婚です、わたしたち』(太郎次郎社エディタス)『PTAをけっこうラクにたのしくする本』(同)など。テレビ、ラジオ出演、講演多数。HP

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