フランチャイズで偽装発覚 マクドナルド揺らぐ「原田改革」

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業績V字回復の裏で鬱積するFCの不満

 しかし、FC化を進める中で、急回復のひずみによる悲痛な声が現場から上がり始めた。
 ある現役のFCオーナーは「原田体制になって明らかに儲からなくなった」と言い切る。中でもFCを苦しめているのが、クーポンによるディスカウントプロモーションだ。紙媒体による配布だけでなく、携帯電話経由でもクーポンはバラまかれる。03年に開設したクーポン配信サイトは中高生の利用が急増して会員数は500万人を突破。前出のオーナーによると、中高生の来客が増える夏場などはクーポン利用ばかりで、せっかくの繁忙期にもかかわらず、売り上げが増えても利益が伴わない状況に陥っているという。

 そうした中でも本部だけは潤う構図だ。コンビニがFCの粗利益からロイヤルティを徴収するのに対し、マクドナルドは売り上げからロイヤルティや広告宣伝料、賃貸料などを吸い上げる方式を採用しているからだ。本部は割引の痛痒を感じない。

 FCにとっては、増収策の柱の一つとして昨年5月から導入された24時間営業も重荷だ。ドライブスルー付設店舗を中心に急拡大し、今年6月末では全店舗の3割近く、1224店にも上る。だが、窮状を訴える声が漏れてくる。あるオーナーは「本部の担当者はとても売り上げが上がらないような店でも24時間化を強要してくる。『やらなければ再契約(10年契約)はないですよ』といったことも平気で言う」と話す。

 戦略と裏腹に、原田氏の就任後、FC比率が若干だが一時的に落ち込んだという事実がある。改革が推し進められる中、100名ほどのオーナーが「廃業」を選択したためだ。元オーナーは打ち明ける。「知り合いの現役オーナーから『人集めに苦労し24時間営業がきつい。やめるタイミングをいつも考えているが、借金があって簡単にやめられない』との嘆きを聞く」。具体的な数字の公表はないが、FC全体の収支は改善していると原田氏は強調する。「私の就任前よりも(収支が)悪くなった人がいれば、自己責任です。儲かったから昔がよかったと言われても環境が違う」と突き放す。

 今回の不祥事を受け、本社に全国のFCオーナーを集めて開いた緊急決起集会。偽装の経緯が説明されると「信じられない」と言わんばかりに会場はどよめいた。ただ、出席した関係者によると、原田氏が壇上に立ったときに沸き起こった拍手は、会場に陣取った200人前後のマクドナルド幹部社員らによるものだった。300名超に上るオーナーの約9割は本社の元社員だが、彼らは冷ややかな視線を向けるだけだった。

 集会のメインセレモニーとして、全員がその場で食品安全管理に対する宣言書に署名したという。しかし、本社とFCオーナーとの間にすき間風が吹く中、どれほどの実効が上がるというのだろうか。

(書き手:井下健悟、風間直樹、山本亜由子 撮影:吉野純治)

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