「1人ブラック企業化」するしかない父親たち

理想を追う夫ほど、都合良く利用される

仕事と家庭の両立を追いかける父親はパンクしています(撮影:今井 康一)
男性の家庭進出をめぐる理想と現実のギャップはなぜ埋まらないのか。これまでのイクメンブームの盛り上げ方に短絡的な部分があったと認めざるを得ないのではないか。仕事と家庭の板挟みに悩む父親たちと彼らに殺意さえ覚えるという妻、理想ばかりを言っていられない会社――。それぞれの本音と世相を物語る数々のデータを追った『ルポ 父親たちの葛藤 仕事と家庭の両立は夢なのか』(PHPビジネス新書)の筆者である育児・教育ジャーナリストのおおたとしまさが、「父の日」を前に考える。

仕事と家庭の両立で全身脱毛症に

「朝ご飯をつくり、洗濯物を干し、子供を保育園に連れて行くのが毎朝の私の役割です」と、30代半ばの男性は言う。週末は掃除もする。

中堅の広告代理店に勤めており、多忙を極める。平日の帰宅はほぼ毎日深夜となる。そんなときでも、妻が晩酌をして流しに置いてあるグラスと小皿を洗って片付けておくのが日課となっている。

同い年の妻は大企業の一般職として働いている。「自分だけの稼ぎでは足りないから」とお願いして仕事を続けてもらっている。その負い目があるからか、夫が妻に不満をぶつけることは少ない。

夫婦でテレビを見ていたら、家事の分担が話題になっていた。おそるおそる、聞いてみた。「俺がやってる家事って、1割くらいかな?」。本当は2割くらいはやっているつもりだったが、少なめに言ってみた。妻の返事は「何言ってるの。1%でしょ」。

夫婦の年収はほぼ同じ。「あんたの稼ぎが少ないから私も働かなければいけないの。それなのにあなたは仕事ばっかりで、結局私が育児も家事もやらなければいけない。いっそのことあなたが仕事を辞めて、育児も家事も全部してくれないか」と言われたこともある。

妻は約1年間育休を取ったあと、さらに約1年間の時短勤務をしていた。「きっと職場で肩身が狭かったのでしょう」と当時の妻の立場を思いやる夫。

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