大手化学メーカー、自動車用途の強化に走る 車体の軽量化ニーズに大きな商機

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化学大手がこぞって自動車分野の強化に走るのには理由がある。

まず、世界の自動車生産台数は、新興国の経済成長などで年率2~3%前後の安定成長が続いていること。iPhoneの売れ行き次第で生産数量が大きく振れるようになった液晶・半導体向けの電子材料分野とは違って、ボラティリティ(変動)リスクも少ない。

そしてもう一つの理由が、自動車の素材転換だ。自動車業界は燃費性能の改善策として、車体の軽量化を推し進めている。現在のところ、自動車に占める樹脂系の使用率は重量ベースで1割強だが、軽量化対策による金属からの代替でさらに比率が高まるのは確実。化学メーカーにとっては絶好のビジネスチャンスだ。

樹脂など軽量素材の採用部分が拡大

三菱ケミHDが自社の素材技術を駆使した次世代コンセプトカーは、車体重量が490キログラム。左は事業推進センター長の石渡氏

三菱化学の四日市事業所(三重県)内に拠点を構える、三菱ケミカルHDの自動車関連事業推進センター。訪問客が入り口でまず目にするのが、丸みを帯びた銀色の電気自動車だ。

名前は「APTSIS」。同社が技術力をアピールするために、億円単位の費用をかけて独自に製作した次世代コンセプトカーである。

車体重量は490キログラムと一般乗用車の半分以下。車体シャーシやボンネットには最先端の炭素繊維複合材、構造材の一部はGMT(ガラスマット強化熱可塑性プラスチック)、ボディ外板は特殊な配合を施したPPコンパウンドを使用。また、フロントやリア、サイドのウィンドウは、ポリカーボネード樹脂で作られている。いずれも三菱ケミHDのグループ内にある技術を用いた。

事業推進センターの石渡氏はこう期待を込める。「これまでは内装材用途がビジネスの中心だったが、今後は窓や外板、構造部材でも軽量素材の採用が徐々に広がる。当社はさまざまな素材や技術を提供できるので、そうした軽量化ニーズを確実に取り込んでいきたい」。

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