貧困者を安易にコンテンツ化してはならない

異様な容姿の奥に見え隠れする「本当の彼女」

まず第一に、多くの「速報性」を求めるテレビメディアや新聞メディアのほとんどは、限られた短い取材期間の中で当事者を見つけ、さらっと取材してそれをコンテンツにしようとしてしまう。だがことに相手が貧困者の場合、そこで起きる弊害は、甚大だ。

初回の原宿取材で登場した「ホークちゃん」である瑠衣さんを、その初回の印象や言動のみでルポとして描いたら、どうなってしまうだろう。それはほとんどギャグだ。瑠衣さんの特異な容姿やめちゃくちゃな言動は、下手をしなくても嘲笑の対象になりがちだ。彼女をそのままに描くことは、見世物小屋的な露悪趣味を満たすギャグコンテンツとして消費されかねないし、貧困当事者への差別を招きかねない。

けれども、瑠衣さんの抱えた問題や、ウソのベールの奥にあった本当の生い立ちや、ずっと味わい続けてきた彼女の苦しみは、何度もの取材でようやくこぼれ出てきたものだった。今回の取材では「幸いにも」初回取材の直後に彼女がトラブルに巻き込まれて苦境に陥ったから早々に本音が聞き取れたが、彼女が売春のシノギでギリギリ生活を継続させることができていたならば、もっともっと取材に時間がかかり、悪くすればいつまで経っても本音や本当の話が聞き取れなかったかもしれない。

つまり、さまざまな当事者取材の中でも、貧困者の当事者取材は本当の対象者の像が見えて来るまでに時間がかかるのだ。理由は明らかで、重度の貧困とは複雑な要因が長期間連鎖して陥るものだからで、むしろその要因が複雑でわかり辛いからこそ、彼らは支援の手からすり抜け続けて今も貧困にあるのだと言えるから。単に昨日今日失職したからというものではないからである。

大手メディア記者と貧困者は別世界の住人

さらに最悪なのは、大手メディアの記者となる平均的な人物と、取材対象となる貧困の当事者が、同じ日本にありながら別世界の住人だということだ。

僕自身、貧困当事者についていくつもの本を出し続けてきた結果、多くの大手メディアから「取材に協力してほしい」「取材対象者を紹介してほしい」「取材対象者の探し方を教えてほしい」と、うんざりするほどの量の依頼を受けてきて、「ご自分でお探しください」と依頼のほぼすべてを断ってきた。

そこそこキチンとした家庭に育ち、有名大学に進学してドロップアウトすることもなく、そこそこ苛烈な競争率を勝ち抜いて大手メディアの記者になった人々にとって、原宿に現れたあの「ホークちゃん」は、明らかに想像のはるか斜め上で、理解不能だろう。

僕も記者として今よりもっと未熟な頃は、こうした協力依頼に応えて取材したことのある当事者を紹介したこともあったが、見事に100%の確率でもめ、後に紹介した人たちからクレームを受けるハメになった。

取材の現場で正論を振りかざす、安易な解決策を押し付けるならまだしも、人格を否定し説教する。「あなたそのままで大丈夫だと思ってるの?」という。

殺意が湧く。

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