海外駐在、さあ子どもの教育をどうする!? 乳幼児期に重要な母語確立と幼稚園選び

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人間形成の基礎となる母語が最も急激に発達するのは1歳過ぎから5歳ごろまでの間で、平均して1日6~10語、多い時期には10語以上もの新しい言葉を習得すると言われている。そしてこの時期を過ぎると、習得したそれらの言葉を土台として思考力や表現力が自然に広がっていくようになるのだ。

しかし、乳幼児期に日本語に接する機会が少ないと、それ以降の日本語がうまく伸びず、自分が相手に伝えたいことがうまく表現できなくなることがある。たとえば、「冷たい水を飲みたい」を「寒い水を飲みたい」と言ったり「厚い本」を「太い本」と言うなど日本語の使い間違いが起こったり、日本語に外国語が混じる表現をいつまでもするようになる。小さなうちなら笑い話で済むが、いつまでたってもこうした日本語しか話せずにいると、徐々に日本語でのコミュニケーションに支障をきたすようになり、その先の日本語での学習が難しくなり、帰国後も学校の勉強についていけない状態が長く続くようになってしまう。

母語の発達に役立つ絵本の読み聞かせ

ではどうやって日本語を育てていけばいいのか。それには家庭内では日本語で会話をするというルールを徹底させる必要がある。具体的には丁寧な日本語で語りかける、子どもの話を良く聞いて、日本語でない単語が出てきたら、根気強く日本語に直して返してあげる、日本語の絵本や教科書の音読をさせる、日本語でお手紙やEメールを書く、などが効果的だ。特に絵本の読み聞かせは日本にいる時以上に時間をかけてすることが、母語の発達に役立つと言われている。

母語は普段の生活に必要なだけでなく、理解力や思考力、自我の形成にも重要な役割を果たす。必要な時期にきちんと確立させることが心身の健やかな成長につながり、第二言語の確実な習得をもたらす。将来、子どもが日本を生活の場として生きていくことを望むのであれば、意識的に日本語に接する環境や機会を作ってあげることが大切だ。

筧 智子 公認心理師

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かけひ ともこ / Tomoko Kakehi

ストレス診断・出張カウンセリング・メンタルヘルス研修・人事や管理者へのコンサルテーション・復職支援プログラムなどを手掛けるEAP(従業員支援プログラム)プロバイダーに勤務。また心療内科での心理職としても活動。上智大学大学院の博士後期課程に在学中でもある。

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