パナが今さらテレビ液晶から「撤退」する事情 6期連続の赤字事業に買い手はつかなかった

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テレビ用液晶から撤退するパナソニックの姫路工場(写真:共同)

「テレビで液晶工場を回していくのは現実的ではない」「長期的にどうするかといえば、今はまったく答えを持ち合わせていない」――。パナソニックの津賀一宏社長が3月末に経営方針説明会の場で、テレビ用液晶パネル事業についてこう語ってから3カ月。その“答え”が出された。

 5月31日。パナソニックはテレビ用液晶パネルの生産を9月末メドに停止させると発表した。同事業の年間売上高は約800億円。パナソニック全体に占める割合はわずか1%程度に過ぎないが、日本の液晶業界の衰退を改めて感じさせるニュースに、注目が集まった。

対象となる製造ラインのある姫路工場(兵庫県)には、期間労働者を含め約1000人が働くが、うち約100人は同社の車載用電池事業やカーナビ事業に配置転換され、残りの人員は同工場で生産が継続される医療機器向けやカーナビ向けの液晶パネルの生産に充てられる。また、パナソニックの「ビエラ」ブランドのテレビは従来から、自社製でなく、他社製パネルが基本的に搭載されていたため、これまで通り販売される。

プラズマで敗北後、液晶でも苦戦

姫路工場が稼働したのは2010年だ。パナソニックが当初注力していたのは、液晶パネルとは規格の異なるプラズマパネルだったが、市場拡大を見込んで、液晶工場も開設。その後、プラズマが液晶との覇権争いに敗れ、2013年に撤退したが、残った液晶事業でも、薄利多売のビジネスモデルに長く苦しんできた。

テレビ用液晶パネルは、スマートフォン(スマホ)向け液晶パネルに比べ、高い技術力を必要としないことから、価格競争力で勝る中国や台湾メーカーが台頭し、相場が下落。姫路工場は2010年の開所以来、6期連続赤字が続いていた。

足元の状況も芳しくない。2016年に入って中国メーカーがさらに液晶工場を立ち上げ、供給量が増えたことで、相場は下落基調にある。2015年は円安で、国内テレビメーカーが液晶の調達を海外から国内に切り替える動きがあり、受注は一時的に上向いたが、今年は円高傾向となり、その特需も剥落している。

そうした中、パナソニックは売上高目標10兆円を取り下げた。今期から利益重視の方針に回帰したことから、赤字で将来性の見込めないテレビ用液晶事業について、撤退を決めたものとみられる。

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