ソニーの命綱イメージセンサーが抱える不安 3年ぶり最終黒字化だが、喜ぶことはできず
「成長ストーリーの核としてきたイメージセンサーの業績悪化については、大変重く受け止めている」――。4月28日に行われたソニーの2016年3月期の本決算会見。吉田憲一郎CFO(最高財務責任者)の表情は厳しかった。
2016年3月期の実績は、売上高8兆1057億円、営業利益2942億円(2015年3月期は同8兆2159億円、同685億円で、いずれも米国基準)となり、減収増益で着地した。スマートフォン(スマホ)事業の縮小で売上高は前年割れしたものの、2015年3月期にあったスマホ関連の特損1760億円が消え、営業増益を維持。最終損益に関しては、2013年3月期以来、3年ぶりに黒字化した。
注目される2017年3月期の業績見通しについては、4月14日に発生し今も余震の続く、熊本地震の影響を精査中として、発表を見合わせた。
ソニーの場合、主にデジタルカメラや監視カメラ向けのイメージセンサーを製造する、熊本テクノロジーセンターの生産活動が地震発生直後から停止。デバイス事業において、直接的な物的損害や復旧費用、補強工事費用が生じる見込みだ。また、生産停止が一定期間継続することによって、自社のイメージセンサーを搭載する他事業でも、機会損失が生じる可能性がある。同社は地震保険に加入しているものの、受けられる保証の上限が200億円という契約のため、被害のすべてを補填するのは難しいという。これらの状況を踏まえ、5月24日をメドに業績見通しを発表するとした。
iPhone鈍化でセンサーが赤字スレスレ
ただ、熊本地震の影響を考慮しなかったとしても、ソニーの先行きが明るいとは言い切れない。ソニーの強みであるデバイス分野が失速しているからだ。
デバイス分野は、2015年3月期まで、金融に次ぐグループの収益柱だった。中でもカメラ用イメージセンサーは、「他社と比べて2~3年、技術的に進んでいる」と平井一夫社長が自負する分野で、スマホ市場の成長とともに拡大してきた。近年は積極的に投資し、2015年末には東芝のイメージセンサー事業を買収している。
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