竹中教授「日本のフィンテックがダメな理由」 米国は無審査でポンと5000万円貸してくれる

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山口:そうすると、フィンテックはこれから金融機関の形をどのように変えていくのでしょうか。

冨田:金融ビッグバンの後、銀行、証券会社、保険会社という業際の垣根が低くなり、たとえば銀行で保険や証券が扱えるようになったり、証券会社でも保険が扱えるようになったりしました。その意味では融合していったわけですが、フィンテックではアンバンドルといって、金融機関が持つさまざまな機能が分解され、それぞれが顧客にとって有利なコスト体系で提供されるようになります。

たとえば融資の部分だけを切り離してレンディング、資産運用はロボアドバイザー、という具合になっていく。こうしたなかで既存の金融機関のオペレーション機能も、ここは対面、ここはテクノロジーというように、分化されていくのだと思います。

雇用制度を変え、若い人に大きな権限を与えよ

山口:日本から「成功するフィンテック企業」を輩出するためには、どうすれば良いのでしょうか。

竹中:雇用制度の改革に掛かっていると思います。たとえばこの20年間、銀行に勤めている人は、いうなれば不良債権を増やしてきた人たちです。その人たちにフィンテックは出来ないでしょう。

だから、若い人に大きな権限を与えて、自由に取り組んでもらえば良いのです。昨年のダボス会議では大学改革について話し合ったのですが、中国のビジネススクールでは、学長から教授、准教授に至るまで、すべて5年契約だそうです。5年も経つと、ビジネスの世界は様変わりするので、ビジネススクールもそれに合わせて、新陳代謝を進めているわけです。

実際 、自動車ビジネスの世界でも、今やトヨタ自動車の最大のライバルはグーグルだったりするわけです。そんな時代に、昭和のビジネス慣習に囚われた人が社内を闊歩しているようではダメなのです。日本でフィンテックを盛り上げるには、雇用制度そのものを大きく変える必要があります。

山口:単なる金融業界の問題だけでとらえると、大きな間違いを犯す恐れがありますね。

冨田:日本との対比という意味でシンガポールの人たちの話をしますと、彼らは優秀なのですが、実は意外と起業家意識が低いのです。そのなかでフィンテックを推し進めるため、他国から起業家意識の高い人を呼び寄せ、フィンテックビジネスを立ち上げさせています。実際、アジア各国、欧州などから優秀な人材が集まっています。まさに国を挙げて、フィンテックに取り組んでいます。もはや金融業界だけの問題ではないと認識しているのでしょう。

竹中:あとはサイバーセキュリティの問題も考えていく必要があります。アタックの入り口が無限に広がっていきますから、その対策をきちっと講じておかなければなりません。

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