フィンテック「決済革命」で銀行はどうなるか 急拡大する新金融サービスの光と陰

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顧客の利便性が非常に高い、フィンテックによるサービス。金融業界はどう対応すべきか(イラスト : サイクロン / PIXTA)
「フィンテック(FinTech)」とは、金融(Finance)とテクノロジー(Technology)の合成語であるとは、よく聞く説明である。しかしその実態は、単にITの活用を進めるだけではなく、スマートフォン、AI(人工知能)、ビッグデータなどを駆使した新金融サービスのことである。既存の銀行サービスにない新しい価値を提供するので、ある種の「金融ベンチャー」とも言える。さらに、最近では「ネオバンク(Neo Bank)」(Neoはギリシャ語の“新しい”)とも呼ばれている。
現時点において、フィンテックによるサービスは「決済」が約半分と言ってよい。特に、「個人向けの新決済サービス」がメインフィールドとなっている。それも店舗を持たない、既存の金融機関の手が届かない便利なサービスを手掛けている。
この新サービスは銀行の中核ビジネスまでは至っていないが、銀行業務を徐々に侵食していることは間違いない。主として個人取引の分野で、銀行の規制を受けない領域で、低コストのサービスを提供する。しかも、「モノ」の流れと結びついていることが多く、顧客の利便性は非常に高い。
急速に台頭しつつある注目の新サービスは、金融の世界をどう変えるのか。金融業界は、この新サービスとどのように向き合っていけばよいのだろうか。『決済インフラ入門』を上梓した宿輪純一氏が解説する。

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まず、いくつかのフィンテック新決済サービスを見てみよう。

米国の「PayPal(ペイパル)」は筆者も使用しているが、これは電子メールアドレスとインターネットを使った代表的な決済サービスである。PayPal口座間やクレジットカードでの送金や入金を行う。インターネット通信販売・オークションのeBayに買収されたが、2015年に独立した。特にネット上で店舗や個人から買物をする際、カード番号を相手に通知せずに決済ができるサービスが好評で、会員は2億人を超えている。

中国の「Alipay(アリペイ:支付宝)」は、中国のネットショップに欠かせない決済インフラになっている。AlipayはEC(電子商取引)最大手のタオバオ(淘宝)と同じ、アリババ集団(グループ)に属する会社である。タオバオで商品を購入する際はAlipayのアカウントを使用する。しかもAlipayでは送金も可能で、サービス利用者は8億人を超えている。顧客の代金を一時的に預かり、商品到着を顧客が確認してから決済するエスクローサービスが人気である。配送を確認してから決済することを実現し、配送事情がよくない中国での電子商取引に拡大に貢献した。

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