JR大赤字線は100円稼ぐのに800円も掛かる 東海・西・四国・九州・貨物各社の営業係数

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●JR東海

同社の旅客運輸収入において東海道新幹線の占める比率は9割程度と極めて高い。しかも、在来線と比べて新しい路線であるために合理化が進んでいるので、冒頭に挙げた考え方に基づいて営業係数を算出すると極端な数値となってしまう。

ご参考までに2013年度の同社の営業係数を冒頭に挙げた方法で算出すると、東海道新幹線は32・1となる一方で、在来線はすべて営業損失を計上し、最も良好な東海道線でさえ185・2となる。試算とはいえ、これでは現実離れしているのは明らかだ。

JR東海の営業係数を求めるに当たり、費用のうち通常では固定費として計上していた運輸費(駅に関する費用)、保守管理費、輸送管理費をもそれぞれ変動費と考えた。そして、減価償却費とその他の費用とを、JR東海の決算書から明らかとなった東海道新幹線と在来線との旅客運輸収入の比(2013年度は新幹線91・68パーセント、在来線8・32パーセント、2008年度は新幹線90・98パーセント、在来線9・02パーセント)で分配した後、さらに在来線同士では減価償却費を営業キロの比、その他の費用を旅客人キロの比で分配している。

名古屋発着の在来線も健闘

求められたJR東海の営業係数を見ると、東海道新幹線には不利な算出方法を採ったにもかかわらず、60・8という営業係数をたたき出している点には驚く。ちなみに、東海道新幹線の営業係数は国鉄の分割民営化時に51であったという。

当時の国鉄は東海道新幹線に十分な投資を行うことができず、結果として減価償却費もそう多くはなかったと推察される。今日のJR東海は東海道新幹線に対して車両や施設に対して積極的な投資を行っているので、その分の減価償却費が計上されて営業係数が悪くなったと見るのがよいかもしれない。

他に注目してほしいのは中京都市圏の通勤路線が計上した良好な営業係数である。100未満の東海道線、中央線、そして101・0の関西線と名古屋駅を発着する路線が顔をそろえた。

加えて注目したいのは178・2の武豊線だ。中京都市圏の通勤路線として成長著しく、営業係数には反映されていないものの、2015年3月1日には電化を果たした。列車の運転本数が多い場合により経済的な電化が果たされたことで、今後武豊線の営業係数を試算するに当たっても東海道新幹線のような工夫が必要となりそうだ。

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