高学歴で低年収、30代女性の明るすぎる貧困 彼女を救ったのは宗教とセックスだった

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お泊まりデイサービスという全職員が10人もいない小さな職場で、彼女は同僚と次々とセックスした。当然、職場では話題になる。上司からどんなに怒られても、セックスすると男が優しくなることが面白くてやめられなかった。

「セックスすると、みんなカラダにおぼれて優しくなる。ハハハ、すごく楽しかった。年齢が上の人が好きで、未婚の人じゃないと付き合えないので年齢は40歳とか50歳とか。介護の職場しか出会いがないので、いろんな職を転々としているような学歴ない人たちですね。セックスすると『女性と付き合ったのは初めて、君のことは生涯忘れない』みたいなことを言い出す。それで振るとおかしくなって、ひとりは精神病院に行っちゃいました。本当に楽しい。でも、あまりにひどい職場だったから3年続けるのが限界でした」

貧困かもしれないけど毎日楽しい

笑顔がおさまらない彼女は、テーブルにあったiPhone6を取り出した。そして、写真を見せてくれた。そこにはジャージ姿の老人が写っている。

「この人、今の彼氏ですぅ。83歳!」

驚いたので何度か確認したが、本当に「彼氏!」と言う。日本人男性の平均寿命は80.5歳、その年齢を超える余生を過ごす後期高齢者だ。

「宗教の勧誘で団地を回る。そこで知り合いました。ドキっとして私から声かけた。もともと学校の先生をしているインテリ男性で、スペイン語とか堪能なの。熊本地震の翌日だったかな、4月15日に出会ってその日にセックスした。今はやっと普通の仕事に就けたから、仕事が終わって夜9時ごろにチャリで彼氏の住んでいる団地に行く。シャワー浴びて、たまに一緒に浴びたりして、それで一緒に寝るの。必ずセックスします。たまにしか勃起しないから言葉で責めてくるの。スペイン語で『僕のカラダに思い出をたくさん残してください』とか叫ぶんですよ」

今日もこの取材が終わったら自転車で団地に行き、83歳の彼氏とセックスをするそうだ。

「低賃金でおカネはないし、世間で言う貧困かもしれないけど、長時間労働もなくなったし、彼氏もできたし、今は本当に楽しい。こんな楽しかったことは、今までないかも。将来のこととかなにも考えていないかな、50歳年上の彼氏が死んじゃったらそのときに考えればいいことだし。はは」

セックスの話になってから終始笑顔の彼女と、一緒に部屋を出た。暗い部屋から一歩出ると、目が痛くなるほどまぶしい。彼女は待ちきれないといった様子で自転車に乗り、猛スピードで団地へと向かっていった。立ちこぎする後ろ姿を見送った。

本連載では貧困や生活苦でお悩みの方からの情報をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。

 

中村 淳彦 ノンフィクションライター

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なかむら あつひこ / Atsuhiko Nakamura

貧困や介護、AV女優や風俗など、社会問題をフィールドワークに取材・執筆を続けるノンフィクションライター。現実を可視化するために、貧困、虐待、精神疾患、借金、自傷、人身売買など、さまざまな過酷な話に、ひたすら耳を傾け続けてつづけている。著書に『東京貧困女子。』(東洋経済新報社)、『崩壊する介護現場』(ベストセラーズ)、『日本の風俗嬢』(新潮社)、『名前のない女たち』シリーズ(宝島社)など多数。Twitterアカウント「@atu_nakamura」

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