参考になるのは、北海道拓殖銀行、三洋証券、山一證券、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行、などが破綻した1997年から1998年だろう。これらの破綻は、大まかには「バブル崩壊」による不良債権問題という逆風の環境によって起こったものだ。
他方、ここのところ話題になるエレクトロニクスや自動車の企業に関しては、世界的な競争環境の変化と国内市場における、淘汰の二つの環境要因が働いている。金融の問題は、バブルの生成と崩壊に伴う循環的な環境要因だったが、製造業の方はビジネスの競争環境そのものに起因する構造的なものなので、製造業企業の不振の方が回復の希望を持ちにくい面がある。社員は、率直に言って、将来に楽観できない。
筆者は、1997年の山一證券自主廃業発表の際に山一證券に在職していた。三洋証券、山一證券、日本長期信用銀行と大手金融機関が破綻していく様子を身近に見ながら思ったのは、この種の大型破綻は、破綻企業に勤める社員にとって「人材市場に自分と似た人材が大量供給される」ことを意味するということだ。
転職できる人は、早く転職しなさい
シャープ、東芝、三菱自工などにお勤めの方へのアドバイスとして申し上げたいのは、「転職できる人は、早く転職しなさい」ということに尽きる。
例えば、三洋証券からの求職者で動き遅れた人は、採用が決まりそうになったところで山一證券が破綻し、「山一からも大量の人材が市場に出るから、様子を見よう」と採用企業側の態度が変化して気の毒だった。同業他社から見ると、一般論として山一の方が大手なので、優秀な人材が居るように見えたことは否めない。
当時の山一證券の人材にとって幸運だったのは、長銀よりも先に破綻して求職活動を行うことができたことだ。もちろん、業務によっても、個々の人によっても異なるのだが、一般的な人材に対する評判は「長銀の人の方が優秀だろう」というものだった。山一と長銀の潰れる順番が逆だったら、旧山一マンの求職活動はもっと大変だっただろう。
シャープ、東芝、三菱自工の何れにあっても、最悪の場合、企業が破綻する可能性があるし、そうならなくても大規模なリストラ(人員整理)は不可避だろう。事実、シャープは人員整理を発表し始めているし、東芝はなぜか有望な事業まで外部に売却したがっている(原子力部門を国策として残すためなのだろうか?)。
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