過熱するローカル私鉄ブーム! 和歌山電鐵・ねこ駅長編

過熱するローカル私鉄ブーム! 和歌山電鐵・ねこ駅長編

陽光が降り注ぐ売店の軒先に、携帯電話のカメラを構える人だかり。その中心で丸くなってうたた寝をしているのは、制帽を頭にのせた三毛猫である。和歌山電鐵貴志川線の終点、貴志駅のシンボル「たま駅長」だ。この猫の駅長見たさに、全国から鉄道ファンが殺到。たまは、07年4月から運行を開始した和歌山電鐵の�招き猫�として、その役割を立派に果たしている。
 
 もともと関西大手私鉄・南海電鉄が運営していた貴志川線も、例に漏れず毎年5%ずつ利用者が減少、03年には南海電鉄が廃止を検討するに至った。こうした中、地方鉄道のサポート活動を行ってきた岡山電機軌道(岡電)の磯野省吾専務が、個人的な相談を受けたのが貴志川線だった。
 
 結局、地元市民の熱意も実って、沿線自治体が鉄道用地を買い取り、岡電に運行を託す方式で貴志川線の存続が決定。岡電は、営業譲受が決まるとすぐに子会社「和歌山電鐵」を設立。地元から社員26人を採用し、その全員に運行開始までの8カ月間で運転士免許を取得させるとともに、緻密な運営計画を練った。

貴志川線は毎年およそ3億円の売上高に対して、5億~5・5億円の赤字を計上。だが、調べてみると沿線には新たなマンションが建築されているなど、住民は微増傾向にあった。「これはイケる」と磯野氏は確信。沿線住民の利用を促進するとともに、イベントなど新しい仕掛けで定期外の乗客を呼び込もう、と。

たまをキャラクターに、グッズの販売を始めた。1口1000円で地元市民から出資を募り、ラッピング列車の「いちご電車」、車内におもちゃを展示したユニークな「おもちゃ電車」を作った。沿線の神社巡りスタンプラリーやタケノコ祭りなど、年間50以上のイベントも企画。07年度は定期外の乗客が前年比20~30%増え、鉄道収入は12%増えた。

定期の乗客はまだ3~4%減少しているが、明るい兆しはある。伊太祈曽(いだきそ)駅前の駐車場には、以前は多くて3台程度だった乗用車が、最近は20台以上駐車するようになった。最寄り駅まで自家用車で乗りつけ、そこから電車で通勤する「パーク&ライド」が浸透してきている証拠だ。
 
「まだまだ打つ手はたくさんある。力を惜しみなく発揮すればできるはず」と磯野氏の言葉に力がこもる。10年後の黒字化が目標だという。
(週刊東洋経済編集部)

和歌山電鐵
●14.3キロ 14駅
●年間乗車人員:211万人
●売上高:3億1500万円
●保有車両:電車12両
●1日の運転回数:98本
●運転速度:最高時速65km
●一部複線、電化
(注)乗車人員と売上高は2006年度、運転回数は08年4月現在


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