プリンスは、単なる「偶像」ではなく「伝説」だ ボウイ、プリンス、ハガードが音楽界を変えた
プリンス、デビッド・ボウイ、マール・ハガード。2016年に入って音楽界の巨人3人が世を去った。ハガードが亡くなったとき、米ナショナル・パブリック・ラジオは「カントリーミュージックの伝説にしてアイコン、79歳で死亡」と評した。伝説とアイコン(偶像)という2つの言葉はしばしば同列に扱われるが、本当にそうだろうか? 違いはないのだろうか?
多くのエンターテイナーが偶像と呼ばれる。その最たる例はブリトニー・スピアーズだ。しかし、最近亡くなったこの3人のミュージシャンは異なる領域に存在するように見える。いずれもアーティストとして天才だっただけではない。私たちの文化、そして私たちの世界が、彼らの存在によって異なったものになったのは事実である。
偶像は私たちが誰であるかを示すことができる。しかし、伝説は私たちが誰になれるかを示す。
幅広い楽器の演奏を独学で身につけた神童プリンスは、自身の音楽で大胆にもエロチックなテーマを探求した。彼は新たなスタイルで、肌の色が異なる米国人を演じた。セックスシンボルでもあったこのミュージシャンは、紫のシルクとダイヤモンドでその女性的な側面を披露しつつ、演劇風の公演を行った。
社会正義を追求したプリンス
プリンスは、前代未聞のスタイルを創造し、ポップ、ファンク、ブルース、ジャズ、ロックンロールをブレンドした。音楽業界での独自のルールを定め、音楽から映画へと活動の範囲を広げた。彼の歌はあからさまに卑猥であり得るが、精神的な地平に情熱をもたらすこともできる。エホバの証人に傾倒してポップの伝統を断ち切り、メシア風の「I Would Die 4 U」など、自身の歌に頻繁に宗教的なモチーフを含めた。
哲学者でもあるプリンストン大学のコーネル・ウェスト教授は、プリンスが強い社会意識に基づいて、抑圧への反乱と社会の最も弱い者の保護を、自身の芸術に注ぎ込んだ、と指摘する。