熊本地震後、「不謹慎」をめぐる炎上事案が相次いでいる。タレントの発言が不適切だ、売名行為だ、と批判し、「自粛」を求める人々がいる一方で、そうした「言葉狩り」に違和感を覚える人々もいる。こうも毎日、自分の主張を声高に叫び、誰かをやり玉にあげる風潮ばかりを見聞きすると、こんな疑問がわいてくる。「日本人は劣化したのか」と。
今回は、「そもそも、炎上はなぜ起こるのか」について、科学的な視点も交えて掘り下げつつ、この問いかけの答えを探ってみたい。
炎上事件は世界にまん延している
前回の記事で、ネット上での炎上事件は世界にまん延している、という話を書いたが、同様に、日本での炎上事案は加速度的に増え続けている。ソーシャルメディア上でのリスク対策など手掛けるエルテスによれば、炎上事案は一貫して右肩上がりで、2015年12月の件数は126件と、2014年1月の39件からほぼ3倍に上る。
ネット上で、「炎上」の二文字をみかけない日はなく、まさに、再生可能エネルギーのように、絶対に枯渇しない「ネット上の怒りのマグマ」。Internet outrage(激怒、暴力、暴行)と呼ばれるこの現象の奥底にあるものとは何か。
ネット炎上のほとんどのケースが、全く自分が被害者ではないのに、第三者の振る舞いや行動に対し、腹を立てて、制裁を加えようとする「Third party punishment」(非当事者による制裁)といわれるものだ。
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