熊本地震に「不謹慎叩き」が蔓延する真の理由 人間の「本能的制裁欲求」が暴走を始めた

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あたかも、ネット上の多くの人が、クレーマー化しているというような状態には程遠いというわけだ。前述のエルテスの菅原貴弘社長も、「自分の正義をふりかざし、人を一方的に糾弾するような人たちの割合は、昔から一定の確率で変わらないが、ネットによって、顕在化するようになっただけ」と分析する。

つまり、結論的に言えば、日本人だけが劣化している、とは言い切れないということになる。

「折り合いのつけ方」を学ぶには?

人との「折り合いのつけ方」を学ぶ機会が少なくなっている可能性がある(写真:NOBU / PIXTA)

ただ、核家族化や貧困、孤独、など地域や家族のつながりが薄れる中で、現代人が人との「折り合いのつけ方」を学ぶ機会は少なくなっている。異なる価値観を持つ人々と直接的に触れ合いながら、人はお互いを思いやるコミュニケーションを学んでいく。

一方で、歴史的に、同調圧力が強い日本では、アメリカのように、ディベートなどの手段を通して、意見の異なる相手と有機的、建設的に対峙し、議論を交わしていく伝統がないため、考え方の違う他者に対して、一方的に自分の主張を押し付けたり、高圧的な物言いで相手を叩きのめすものだと思い込んでいる人も少なくない(最近のドナルド・トランプ氏の台頭を見る限り、アメリカの価値観も変容を迎えているのかもしれないが・・・)。

ITリテラシー教育の必要性が叫ばれるが、そもそも、もっと基本的なコミュニケーションのルールや共感力を学ぶ機会が、日本人には絶対的に必要なのではないだろうか。

岡本 純子 コミュニケーション戦略研究家・コミュ力伝道師

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おかもと じゅんこ / Junko Okamoto

「伝説の家庭教師」と呼ばれるエグゼクティブ・スピーチコーチ&コミュニケーション・ストラテジスト。株式会社グローコム代表取締役社長。早稲田大学政経学部卒業。英ケンブリッジ大学国際関係学修士。米MIT比較メディア学元客員研究員。日本を代表する大企業や外資系のリーダー、官僚・政治家など、「トップエリートを対象としたプレゼン・スピーチ等のプライベートコーチング」に携わる。その「劇的な話し方の改善ぶり」と実績から「伝説の家庭教師」と呼ばれる。2022年、次世代リーダーのコミュ力養成を目的とした「世界最高の話し方の学校」を開校。その飛躍的な効果が話題を呼び、早くも「行列のできる学校」となっている。

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