隈研吾がレストラン電車をデザインした理由 新国立競技場の設計者がこだわる"木の質感"

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建築家の隈研吾氏がデザインした「西武 旅するレストラン 52席の至福」のキッチン車両(撮影:尾形文繋)
4月17日から運転を始めた西武鉄道の観光電車「西武 旅するレストラン 52席の至福」。西武秩父線などを走っている4000系電車4両編成を大幅にリメークし、車内では和・洋・中の著名シェフが監修する季節のコース料理を楽しめるレストラン電車だ。内外装のデザインは、新国立競技場のデザインを手がける建築家の隈研吾氏が担当。鉄道車両のデザインを手がけるのは今回が初めてとなった隈氏に、デザインのコンセプトや「列車内での食事」に対する思いを聞いた。

移動空間はファンタジー

――鉄道車両のデザインは今回が初めてですね。

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隈研吾(くま・けんご)/1954年生まれ。東京大学建築学科大学院修了。1990年、隈研吾建築都市設計事務所設立。現在、東京大学教授。1997年「森舞台/登米市伝統継承館」で日本建築学会賞、2010年「根津美術館」で毎日芸術賞、2011年に「梼原木橋ミュージアム」で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。2020年東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場のデザインも担当した(撮影:風間仁一郎)

今まで、鉄道車両のデザインと駅舎や建築というのは、車両は車両の専門家、駅舎は駅舎の専門家がデザインする、完全な別領域だったんですよね。

でも、実際に体験する人間としては、街に住んでいて、駅舎に行って、鉄道に乗ってというのはひと続きの体験なので、それをひと続きのシークエンスとしてデザインするということをしてやらないと、これからの観光する人のニーズには応えられないんじゃないかという思いはずっとしていたんですね。

でも、残念ながら、これまで(車両のデザインは)頼まれることはなかったので。今回できることになって、頼まれたときは興奮しました。

移動空間というのは、ある意味では人間がその世界の中に隔離されて、一番ファンタジーを作れる空間なんですよね。今までそこには建築家がほとんど参加できなかったところなので、そこに建築家が参加したならば、きっとすごく面白いことができるんだろうなと思っていました。今回、やっと念願のファンタジーが実現できるというふうに思ったわけです。

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