日本を「貧困大国」にさせないための処方箋 教育、雇用、住宅の自助努力はもう限界だ

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今野:日本の社会保障制度が脆弱であることを前提にするなら、まずは「戦略的」に生き抜くことが大事になります。そのときに、世代間対立なんてしている場合じゃない。子供がブラック企業で使い捨てにされたら、そのツケは親世代にまわってくるわけじゃないですか。「若者は甘い」なんて、言っている場合じゃない。少なくとも、「家族」に関しては、そんなことを言っていても自分の首を絞めるだけです。

だったら、親世代は自分の生活を防衛するためにも、息子、娘と共闘して、賃金を取り戻してほしい。それができなかった場合は、共倒れにならないために、世帯を分離して、必要な社会保障を受けてもらう。「親だから、全部面倒見なければ」と考えてはいけないんですね。

住宅は最大の福祉制度

住宅は最大の福祉制度なのに、それが日本では全然理解されていない

藤田:社会保障の制度でいえば、とにかく住宅政策を拡充することは待ったなしだと思います。住宅は最大の福祉制度なのに、それが日本では全然理解されていない。

だから、低年金、低所得の人でも暮らせるような住宅がまったく不足しているんです。空き家を活用して公営住宅を増やすとか、低所得者向けに家を貸す大家さんや企業に税制優遇するとか、公的な家賃補助制度を入れるとか、中間層や貧困層の可処分所得を上げていくには住宅政策が急務です。

今野:保育園も大事だけど、それ以上に住宅が大事だというのが、藤田さんの持論ですね。

藤田:たとえばフランスがいいモデルです。フランスは、住宅政策のおかげで出生率が上がった。考えれば当然で、支出の大きな割合を占める家賃が下がれば、その分ゆとりができますから、結婚や出産もしやすくなる。日本の少子化対策というと、保育園の増設や長時間労働の是正という話になることが多いんですが、少し誇張していえば、ヨーロッパでも成果が出ているとおり、住宅政策だけでも十分少子化対策になりうるんです。

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