会社の正しい辞め時を見極める「3つの質問」 単なる「比較論」には要注意

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外資系の証券会社に入社した友人は年収が自分の1.5倍。さらに業績連動のボーナスは数百万円もらえる可能性もあるとのこと。稼いだお金を使って海外留学をし、MBA取得をする人もいる職場なのだそうです。

また、総合商社に入社している別の友人は秋から海外赴任が決まったとのこと。赴任先では現地の社員をマネジメントする立場になるとのこと。2人とも「慣れない仕事で不安ばかり」と語っていましたが、眩しくて羨ましく見えてしまいました。

かたや自分はというと、職場で先輩の手伝いのような仕事しかやらせてもらっていません。この会社では、配属された職場から異動できるのは入社5年目以降が通常。給与に関しては入社8年目まで大きく変わりません。当面は大きく職場環境が変わらないことが明らかで、同期の友人と差が開くばかりとしか思えません。

《友人と比較して、恵まれていない環境なのだな。会社を辞めるべきかもしれない》

と比較し、不満が生まれて会社を辞めたいと思ってしまったのです。

ただ、その気持ちはかき消されていきました。自分以上に恵まれていない職場環境の友人に会う機会があり、会社を辞めるという決断をする勇気がなくなったからです。このSさんのように誰かと比較して「給与が安い」「上司に評価されていない」「休暇が取れない」という比較から辞めたくなる場合、逆に誰かと比較して恵まれていると認識できると、辞めたいという気持ちが萎えるようです。

当方も自分の評価と同僚への比較の違いに不満を抱き、会社を「辞めたい」と感じたことがかつてあります。自分の方がいい仕事をしているのに、高い評価を得ている同僚が多数いる。ならば、会社を辞めて、転職するか、自分で会社を立ち上げるか。悩みました。

自分に似通っている他者との比較

こうした相対的な衝動を心理学では「社会的比較論」と呼びます。フェスティンガーによって提唱された理論で、人は自分自身を正しく評価したいという動機を持っていますが、自分自身を評価するための基準として、自分に似通っている他者との比較を用いる傾向があるというもの(比較することができないと不安になってしまうともいえます)。

この傾向を活用して「君は同期に比べて……」と、同僚と比較して部下の意欲を高めようとする上司がいます。巧みなマネジメント術といいたいところですが、他人による比較を嫌がる若手社員が増えてきています。慎重に活用するべきでしょう。

もちろん、中には他人との比較で自分の評価が低いときに「ならば頑張ろう」という向上心がわくという人もいます。しかし、実際には自分は恵まれてないと周囲に対する不満を生み出す人も少なくありません。

この不満が大きく(かつ長く続く)と会社を辞めたくなるのです。さらに加えて、自分の会社と他人の会社を比較することも、辞めたい気持ちが起こる要因になります。

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