「匠大塚」は実の娘を本気で潰そうとしている 本家・大塚家具を上回る規模の大型店を出す

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

春日部の新店舗は、勝久氏が作り出した手法である会員制になる見込みだ。商品は中高級家具を中心に幅広くそろえる方針。西武百貨店跡だけに「建物で4万8000平方メートルある」と、大塚家具で最大の東京・有明本社ショールームを超える規模であることをアピールしてみせた。ただ売上高目標については、「目標設定はしていない。お客様が決めるものだ」と話すにとどまった。

勝久氏は「資金も少しは作れた」とも話した。大塚家具の株式を昨年から大量売却しており、20億円以上を手にしている。さらに4月の社債償還裁判で勝訴し、15億円以上の現金も久美子氏側からすでに送金されている。

大塚家具も同じ時期に「大感謝会」

一方、前日の19日に大塚家具の新宿ショールームで会見を行った久美子氏。匠大塚のオープンと同じ22日から「大感謝会」と銘打った大規模セールを始めると発表した。これについて久美子氏は「昨年もこの時期にセールしていた」と話し、匠大塚のオープンにあてるつもりはなかったという。

父の開業にぶつけるようなタイミングで、大規模セール「大感謝会」を実施する大塚家具の久美子社長

さらに久美子氏は匠大塚について、「いろんな強みを持った会社がたくさん出て、お客さんに選択肢が増えることはいいことだ。切磋琢磨して業界が盛り上がるといい」としたうえで、「私どもはやるべきことをしっかりやっていくだけ」と話した。

新生「大塚家具」となって1年。久美子氏は株主総会後から父・勝久氏の経営路線と決別。高級家具路線から中級家具路線へと舵を切り、一人一人に手厚い接客がつく会員制を廃止して、誰もが気軽に入れるカジュアルな店舗へ変更してきた。

ただ業績回復は「まだ道半ば」(久美子氏)だ。2015年12月期は4億円の営業黒字転換(前の期は4億円の赤字)を果たしたが、今年に入ってからは月次店舗売上高が1月10.7%減、2月3.7%減、3月11.8%減と大きな落ち込みが続く。昨年の同じ時期はお家騒動の真っ只中で売上高が大きく落ち込んでいただけに、今年はハードルが低いはずだったが、それをも下回っている。その理由について、久美子氏は「1、2月は昨年末の売りつくしの反動がある。さらに店舗のリニューアル準備と、(新しい手法に変更後の)運用の不慣れさもあり、それが3月の売り上げ減に響いている」と述べた。

今後も厳しそうだ。昨年5~6月は”お家騒動”の「おわびセール」の効果で大きく伸びており、今期は逆に落ち込む可能性がある。かつては少なかったセールを連発しており、その依存度が上がるのも危険だ。さらに久美子氏自身が無料の広告塔になってバラエティ番組などに多数出演したテレビ露出効果も1年経って剥げ落ちてきた面も否めない。

第3ラウンドの結果はどうなるか。父娘どちらのビジネスモデルが正しいか。判断を下すのは株主でも裁判官でもない。顧客だ。

冨岡 耕 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事