新型プリウスも採用拡大、「EPP」って何だ? 車の軽量化対策で脚光、世界で採用広がる

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自動車での採用拡大で需要が伸び、にわかに注目素材となったEPP。その主たるメーカーは、日本のJSPとカネカ、欧州化学メーカーのBASF、韓国ハンファの4社。中でもJSPは、世界シェアの6割を握る存在だ。

もともと同社は1981年に世界で初めてEPPの生産を開始した第一人者で、10カ国以上に生産拠点を構える。間接的な納入分も含めると、世界中の主要な自動車メーカーと取引があり、EPP事業は連結売上高(2014年度実績で1169億円)の約半分を稼ぐ大黒柱。ちなみに、同社は先述したトヨタIMVのリアシート用のEPPを全量供給、新型プリウスでもサプライヤーの1社に名を連ねる。

採用拡大の商談が相次ぐ

典型的な汎用素材の発砲スチロールと違って、メーカー数が少ないのには理由がある。製造自体が必ずしも難しいわけではないが、主用途である自動車に採用されるには、高い品質信頼性と構造解析などの専門技術者、さらにはグローバルでの供給・サポート体制が要求される。こうした点が参入障壁となり、JSPが圧倒的なシェアを有する理由でもある。

EPPを成形して作ったリアシートの底部コア材。鉄のフレームも内部に一体成形されている

その同社にとって、自動車業界での車体軽量化の動きは強い追い風。特にシートはまだ採用初期段階で伸びしろが大きいうえ、採用時の1台当たりの使用量も多い。

底部にモーターなどが収納されている前列シートは内部構造が複雑なため難しいが、リアシートだけに限っても、採用車種が増えれば需要拡大へのインパクトは大きい。

「国内外の自動車メーカーから『次のモデルチェンジでEPPをシートに使いたい』『採用カ所を増やしたい』といった相談や、具体的な見積もり依頼を数多く頂戴している。内定済みの案件も多く、今後が非常に楽しみだ」とJSPの臼井専務執行役員。自動車業界の軽量化ニーズを追い風に、同社のEPP事業も中長期的な成長が期待できそうだ。

渡辺 清治 東洋経済 記者
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