みんなを幸せにする「公益資本主義」とは何か 株主重視経営では持続的に成長できない

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欧米型資本主義とは、「企業は株主のもの」であり、「株主こそが一番偉い」とする株主資本主義の考え方そのものです。確かに、株式は会社の持分権を小口化したものですから、「企業は株主のもの」という考え方は決して間違ってはいません。

ただ、株主の権利を主張する声があまりにも前面に出てしまうと、逆に企業経営にとってさまざまな弊害が生じてしまいます。それこそお客様も、取引先も、そして社員さえもが株主が利益を得るための単なる手段とされてしまうのです。

しかも、多くの投資家は常に、短期間で最大の利益を得ることを求めています。それによって何が起こるかというと、時価総額やキャッシュフロー、利益の伸び率、PER、PBR、ROEといった、数字で示されるものだけで企業の良し悪しを判断しようとする傾向が強まります。数字で線引きしたほうがわかりやすいからです。

たとえば、A社は100人の社員をリストラして10億円の利益を上げました。B社は雇用を守りつつ、同じく10億円の利益を上げました。社員の雇用を守ったかどうかを判断するための投資指標はありません。つまり、株式市場においてはA社もB社も同等に評価されるのですが、社会的・経済的意義としては、B社のほうが断然高く評価されてしかるべきです。

しかし、欧米型資本主義においては、あくまでも表面的な数字の良し悪しでのみ企業価値を判断しますから、100人もの社員をリストラし路頭に迷わせたA社でさえもが、10億円の利益を計上した企業ということで、B社と同等に評価されてしまうのです。

「利益」よりも先に「良い経営」

何かおかしいと思いませんか?

そもそも資本主義は、皆が豊かで幸せになれる社会を創るためにはどうすれば良いのかを考えるところから生まれました。

でも、現状はそうなっていません。欧米型資本主義が幅を利かせるようになり、極端なまでに貧富の差が広がりました。株主としての権利を声高に主張する株主が大儲けをし、投資先の社員は、表面上の利益を取り繕うためのリストラによって路頭に迷わされるという、本末転倒な事象が起るようになったのです。

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