株安の今は不動産投資のほうが儲かるのか マイナス金利下の有効な資産運用策を探る

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4月下旬から日本企業の3月期本決算ラッシュを控え、日本株の先行きに慎重な見方は多い。ドル円相場が1年前より10円ほど円高水準になっているため、「輸出関連企業を中心に、今期は減収減益と慎重な業績見通しを発表する企業が増えそう。そうなれば、外国人投資家が日本株を売る圧力が一段と高まる」(日系証券会社のストラテジスト)。

日本株に懸念が多い中、投資対象として注目を集めているのが不動産だ。先のアンケートでも、今後増やしたい商品として外貨預金や債券、日本株投信を押さえ、日本株に次いで2位となったのはREIT(不動産投資信託)だ。

この局面は不動産投資が有効なのか・・・(写真:xiangtao / PIXTA)

REITとは不動産を運用対象とする投資信託だ。中でも東京証券取引所に上場している投資法人出資証券を「J‐REIT」と呼んでおり、現在53銘柄が上場している。J‐REITは投資家から集めた資金を複数の賃貸不動産に投資し、その賃貸収入や不動産売却益を投資家に分配する。

高利回りなREITに関心高まる

分配金は株式の配当金に相当するものだが、J‐REITでは利益の100%を分配する銘柄が多い。そのため平均配当利回りが2%を下回る日本株に比べ、J‐REITの分配金利回りは3%程度と高い。昨年末から今年3月末にかけてJ‐REIT指数は8.5%上昇しており、日経平均株価(12%下落)と対照的に活況を呈している。高利回りの分配金を求め、投資家のREITへの関心が高まっている。

不動産投資・証券化コンサルティングを手掛けるアイビー総研の関大介代表取締役は、J‐REIT市場全体にはやや過熱感があるとしながらも、「首都圏の賃料上昇を受け、今年はまだ、オフィス系銘柄を中心に期待が持てる」と見通す。マイナス金利下で国内の債券利回りが低下する中、運用難にある金融機関が運用資金の一部を債券からREITに移すとの見方も出ており、REIT市場の一段の拡大を予想する専門家も多い。

REITに加え、マンションを中心とした現物不動産への投資も注目が高まっている。「昨年からアベノミクスによる限界を感じていた。投資対象を株や投信から、現物の不動産にシフトした」と語るのは、電機メーカーに勤務する40代後半の男性だ。現在は都内や首都圏近郊に投資用マンションを30物件保有している。銀行からの借入総額は3億円ほどに上るが、「いまや年収の半分以上が不動産収入。繰り上げ返済も順調に進めており、今後、物件の買い増しも考えたい」と意欲的だ。

ただし、安易な現物不動産への投資は危険と警鐘を鳴らす声もある。青山財産ネットワークスの高田吉孝・執行役員財務コンサルティング事業本部副本部長は「(マンション価格は上昇しているが)都市部など局所的。日本の人口が減っていくことなどを考慮すると、逆に今は売り時ではないか」と、これから現物不動産へ投資することへのリスクの高さに注意を促す。

マイナス金利下でいよいよ預貯金に頼れなくなる中、資産運用の重要性は増している。各投資商品のリスクとどう付き合い、資産を築いていくか、個々人の投資判断が問われている。新年度を迎えた今、将来を見据えたマネープランを見直すにはいいタイミングだ。

鈴木 良英 東洋経済 記者

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すずき よしひで / Yoshihide Suzuki

『週刊東洋経済』編集部記者

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