「パナマ文書」の衝撃波は、日本にも到達する メガトン級リークの影響は甚大だ

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文書が流出した法律事務所「モサック・フォンセカ」のジブラルタル事務所で(2016年 ロイター/Jon Nazca)

「パナマ文書」の第一報に接したとき、すごいものが出て来たなと思うと同時に、ついに出たかという感慨を持った。なぜなら海外ではタックスヘイブンを利用した投資・節税・脱税が横行しているからだ。

今はもうあまり見ないが、かつて英国航空社の機内誌には、後ろのほうにカリブ海やジャージーでの会社設立サービスの広告がたくさん出ていた。それらが合法な目的だけでなく、大規模な脱税や国家権力者の蓄財に使われていることは周知の事実だった。

タックスヘイブンは日常の一部

欧米ではプライベートバンキングの長い歴史があり、富裕層に対してタックスヘイブンを利用した様々なスキームが提供されている。たとえば私が住む英国で以前流行っていたスキームの一つに、リヒテンシュタインに基金(foundation)を作って、そこに資産を移し、相続税を回避するというのがあった。友人の一人は、数年前に映画製作への投資や、開発振興地域への投資に対する優遇税制を利用した節税スキームを提案されたことがあるが、いずれもタックスヘイブン経由の投資だったという。

タックスヘイブンは国際金融の世界でもよく利用される。金融マン時代、サウジアラビア航空のボーイング747型貨物機をファイナンスしたことがあるが、そのときはケイマン諸島のペーパーカンパニーに飛行機を所有させ、そこからサウジアラビア航空に飛行機をリースする形にした。銀行団がペーパーカンパニーの株式に質権を設定すれば航空機をがっちり担保に取ることができ、航空機の輸入税や金利への源泉課税もないという利点があったからだ。

ヘッジファンドの投資もたいていタックスヘイブンのペーパーカンパニー経由である。ペーパーカンパニーの株式を売ることで簡単に投資案件の売買ができるし、余計な税金もかからないからだ。

証券化においても、対象資産をタックスヘイブンのペーパーカンパニーに所有させ、それに基づいて証券を発行する。M&Aでも、被買収企業を将来転売しやすいように、タックスヘイブンのペーパーカンパニーに株式を所有させることが多い。

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