精神障害者を「地域」で支える壮絶現場の本音 潜在需要の多さに支援が追いつかない

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重い精神障害を抱える患者らの訪問診療や生活支援に取り組む谷口研一朗さん

重い精神障害を抱え、家庭に閉じこもったり、社会との関係がうまく築けない患者を訪問し、在宅でケアする「佐賀アクト」が活動を始めて、1年。

医師による診察のほか、専門スタッフが一緒に食事や散歩をしたり、行政や銀行の手続きに付き添うなど、ニーズに合わせて365日、24時間態勢で支援に当たる。社会的課題になっている、精神障害者が地域で自立した生活を送る上でのサポート役としても期待される。

「あなたの支援者です」とは言わない

当記事は佐賀新聞LIVEの提供記事です

佐賀アクトは佐賀市川副町で精神科の診療所を開く谷口研一朗さん(46)の呼び掛けで、同市木原の訪問看護ステーション「えのか」と連携し昨春発足。もともと、精神疾患患者の在宅治療や生活面を包括的に支えるために米国で開発されたプログラムが原型で、医師や看護師、精神保健福祉士、作業療法士ら15人ほどのスタッフが在籍する。

患者は「常に誰かに見張られている」などの幻想や妄想症状があり、びくびくして会話が成り立たないこともある統合失調症の人や、家に閉じこもり、何度訪問しても面会までたどり着かない人など、症状は多様。生活保護などの手続きを知らず、必要な支援を受けられていなかったりする場合もある。

「『診療所から来た』『あなたの支援者です』など相手が身構えるようなことは言わず、同じ生活者として、目線の高さを合わせて接するようにしている。患者さんが安心できる空間で密に関わり、信頼関係を築きたい」と谷口さん。

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