ロシアの成功で得た「解」 三菱自動車が選ぶ道

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ロシアの成功で得た「解」 三菱自動車が選ぶ道

2004年、頭を下げ謝罪する岡崎洋一郎会長(当時)がテレビ画面に大写しになった“あの時”について、社外のみならず社員もが一様に口をそろえる。「当時は、会社が潰れてしまうと思った」。

リコール隠し発覚を機に、一度は地獄を見た彼らにすれば、それは奇跡のような数字に違いない。今年2月、三菱自動車が発表した07年度営業利益予想は100億円上方修正した800億円。1970年に三菱重工業から独立して以来の最高益だ。

再建期間である昨年までの過去3年間を通じて、円安が続いたという恩恵も確かにある。しかし一方で、三菱自動車が世界に保有する工場の稼働率も、04年平均の62%から現在は90%超へと向上していることは、見逃せない事実である。三菱グループからの「ヒト・モノ・カネ」の支援の下、発売していったSUV「アウトランダー」や、新型「ランサー」などの新車が、世界で着実に台数を伸ばしていった結果でもある。

持続的成長のカギ握る“虎の子”ロシア

復活にひとまずメドをつけた今、次の課題は「持続的成長」にほかならない。しかし、その試金石である08年度から3年間の新中期経営計画を発表した2月末、益子修社長は「非常に難しいタイミングでの発表となってしまった」と苦渋の表情を浮かべた。円高、国内市場成熟、北米需要低迷と、昨年後半から急に暗転した事業環境。計画は大幅に見直された。最終年度である11年3月期の営業利益目標は900億円。08年3月期見通しの800億円よりわずか100億円の増加にとどまる。

成長を続けるうえで、新興国を頼みの綱とするのは他の自動車メーカーも同じ。問題は、いかにして中堅メーカー、しかも再建間もない三菱自動車が、アジア・欧米の列強メーカーと戦っていくかということだ。


 それを探るうえで一つの可能性を示すのが、ロシア市場での成功だ。三菱自動車にとって、この地は今や“虎の子”となりつつある。07年度の販売計画は前期比51%増の10万5000台。08年度は14万台を計画し、海外に展開する約170カ国中、最大の販売先となる。現地でも日本勢ではトヨタ自動車、日産自動車に続く3位につけ、肩身の狭い国内市場とは対照的な堂々たる成績だ。

米民間調査会社グローバル・インサイトによれば、16年のロシアの乗用車需要は388万台に達し、欧州最大級の市場になると予想されている。世界中から熱い視線が注がれるロシアで、三菱自動車はいかにして橋頭堡を築くことができたのか。それを解明すべく現地を取材した。


 車道にたまった雪を、タイヤが勢いよく跳ね上げていく。あふれんばかりの車で混雑するモスクワ市内の様子は、この5年で2倍に膨れ上がったロシアの新車市場活況を表すようだ。中心部からクルマで北へ40分ほど行った所に、三菱自動車の巨大ディーラーがある。平日昼間にもかかわらず、20人近い客が店内のそこここで商談の真っ最中だった。

この販売店を直営で経営しているのは、国内最大級の自動車販売会社「ロルフ」。ロシアにおける三菱自動車の輸入総代理店であり、現地での店舗展開、商品・広告戦略、人材開発を一手に担う重要なパートナーだ。日産やトヨタなどは直接出資の輸入販売会社を持っており、独立系の現地企業に事業を委ねているのが三菱自動車の大きな特徴である。

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