札幌市民が「北海道新幹線」をスルーするワケ 延伸ははるか15年後、待望の声も聞かれず…

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現在、札幌と函館を結んでいる特急「スーパー北斗」(写真:Yokokaru / PIXTA)

さらに、これは札幌市に限らないが、二次交通の整備も課題となる。新幹線各駅から観光地、そして道内の各都市へと旅客を誘導していく上で、どのような交通体系を整備していくのか。札幌市では“北海道の発展なくして札幌の発展なし”というスタンスのもと、道内観光の拠点として各地域との連携を強めていくという。

もともと、札幌市においても新幹線札幌延伸への期待は高い。札幌商工会議所事務局は、次のように話す。

「今回の開業ではビジネス需要よりも観光利用が大半で、まだまだ札幌の企業に大きな影響があるとは考えていません。観光産業は意外と裾野が広く、土産物などの需要が高まれば一定のプラスの効果はあると思われますが、それも限定的。むしろ、15年後に札幌まで延伸されてから、ビジネス需要も大きくなり、札幌だけでなく北海道全体に大きな経済効果をもたらしてくれるはず。ですから、今はそれにどれだけ備えていくことができるか、弾みをつけることができるかが重要だと考えています」

北海道の浮沈の鍵を握る新幹線

新函館北斗~札幌間が新幹線で結ばれれば、鉄路で3時間半かかっていた札幌・函館間の移動時間も半分以下に短縮される。現状はあまり見られない両市の交流も活性化し、さらに道南地域から旭川・帯広など道内各地へのアクセスも格段に向上する。さらに、仙台・盛岡をはじめとする東北地方と北海道も結びつきを強くしていくことに繋がるだろう。

このように、期待の大きな札幌延伸だが、それもこれも今回の開業の“成功”が重要になる。そのためにも、札幌でいかに“待望”の機運を高めるかが大切だ。

初めて北の大地に足を踏み入れた新幹線が、北海道にどんな影響をもたらすのか。その“本番”は2031年の札幌延伸以降ということになりそうだが、その行く末を決めるのは新函館北斗までの今回の開業。札幌の、そして北海道の浮沈の鍵を握るとも言える北海道新幹線の動向に、今後も注目していきたい。

鼠入 昌史 ライター

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そいり まさし / Masashi Soiri

週刊誌・月刊誌などを中心に野球、歴史、鉄道などのジャンルで活躍中。共著に『特急・急行 トレインマーク図鑑』(双葉社)。

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