東大推薦入試の「合格実績」は誰の手柄なのか AO義塾・報道の矛盾の真相があきらかに

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彼には、塾に頼らずにつかんだ合格を誇りに、大学生活を迎えてもらいたい。

推薦・AO入試にも合格実績のガイドラインを設けるべき

東大の推薦入試は2020年度以降の大学入試改革の試金石という意味合いが強い。そこで一部の塾があたかも「攻略」してしまったかのような誤情報が流布すれば、「やっぱり推薦入試やAO入試はダメな選考方法」という言説につながり、大学入試改革に対する健全な議論を阻害しかねない。

また、大学入試改革では大学入試がAO入試に類似した形になる方向性が示されている。今後、推薦入試やAO入試がさらに脚光を浴びれば、そこに参入する塾も増えるはずだ。しかし各塾がこぞって勝手な合格実績を掲げたら、受験生やその保護者は何を信じていいのかわからなくなる。

「言ったもの勝ちで、限りなく嘘のような合格実績を掲げた塾に優秀な生徒が集まるようになると、いつの間にか、嘘があたかも本当のように見えてしまうようになるのが恐ろしい」と江口氏は嘆く。

教育政策アドバイザーであり、お茶の水ゼミナールなどでAO入試対策講座を担当する藤岡慎二氏は、「業界として、AO入試についても早急に合格実績表示のガイドラインを策定すべき」と訴える。

塾業界には真摯な対応を求めたいし、受験生およびその保護者においては合格実績の数字だけに飛びつかない冷静さを促したい。そして何より、内実のわからない合格実績を垂れ流すことのないように、マスコミは注意してほしい。

おおたとしまさ 教育ジャーナリスト

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Toshimasa Ota

「子どもが“パパ〜!”っていつでも抱きついてくれる期間なんてほんの数年。今、子どもと一緒にいられなかったら一生後悔する」と株式会社リクルートを脱サラ。育児・教育をテーマに執筆・講演活動を行う。著書は『名門校とは何か?』『ルポ 塾歴社会』など80冊以上。著書一覧はこちら

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