東大推薦入試の「合格実績」は誰の手柄なのか AO義塾・報道の矛盾の真相があきらかに

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AO入試対策の塾にできることは、基本的には、その人の一部の要素に影響を与えることでしかないのです。ですから洋々では、あたかも自分たちの手柄のように合格実績を公表するのはやめようと、開業当初に決めました」

AO入試対策塾では生徒との関わり方も千差万別

江口氏によれば、AO入試のみに絞って大学入試対策を行う受験者は少数派であり、洋々の受講生の多くも、一般入試対策として他塾にも通っているのだという。そこで身に付けた学力も、もちろん学校で身に付けた学力や技能も、当然AO入試の評価対象とされる。

今回の東大推薦入試に関しても、科学オリンピックに出場するなど突出した活動実績があり、各学校から男女1名という非常に厳しい推薦枠を獲得している時点で、本人たちのもともとの力量によるところが大きいのは明らかだ。

そもそもそれがAO入試や推薦入試の狙いであり、AO入試対策塾のみで、推薦・AO入試を「攻略」することなどあり得ない。

さらに、AO入試対策においては、塾と受講生の関わり方も千差万別であると、江口氏はいう。

「高校生になった段階からAO入試を目指し、高校生活の過ごし方から相談を始める場合もありますし、本番直前に模擬面接を2〜3度行うだけの場合もあります。それを一律に塾の実績として宣伝に使うのはフェアではない」

たとえば驚異的な東大合格実績(一般入試)で知られる大学受験塾「鉄緑会」では、6年間をかけて東大入試対策を施すことをコンセプトとしている。良くも悪くも長い時間をかけて、毎年300名を超える東大合格者を育てている。

しかし、AO入試対策塾においては、生徒にかかわる長さも濃さもまちまちだ。

6年間手塩にかけて育てた「合格者1名」と、1次選考を通過してから模擬面接をしただけの「合格者1名」では、塾が掲げる合格実績としての重みはまるで違う。

AO義塾と同じように、1次選考通過者を対象にした無料講座を開設すれば、少なくとも51%前後(この数字の意味は前編で解説)の確率で、東大推薦入試合格者を出すことができたはずだが、洋々ではなぜそれをしなかったのか。

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