なぜ「海外事例の輸入」はうまくいかないのか 行政が主導する「日本型○○」の不都合な真実

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(4) 国による「支援」ありきの制度設計

国の委員会などで制度の検討がなされ、補助金のための予算請求もなされる。補助金のために認定制度も作られる。国政、地方政治としても推進。

(5) 地方組織がコンサルに投げ、日本型◯◯が乱立

自治体や既存業界団体はコンサルに外注し、認定を受けて補助金をもらう事業計画を作らせる。予算のための組織となり、稼ぐことは二の次に。複数の地域で潰し合い。

(6) 国から予算が出なくなった、用済み。次なる制度を食いに行く

といった、かなり高度な「骨抜きシステム」を日本は備えております。

お上に作ってもらうのではなく、自ら作る

大の大人が「国にルールを作ってもらい、予算を出してもらわないと何もできない」という依存前提の思考をしているかぎり、地方活性化なんてものは程遠いです。

欧米のモデルは日本で役立つものばかりではありません。まねるのであれば、制度だけとか、組織の名前だけとかではなく、彼らが現在の成果を生み出すまでに費やした数十年のプロセスをまねて現地化しなくてはなりません。DMOも戦後50年以上かけて、BIDも30年以上かけています。一朝一夕に制度だけ作ればパクれるといった話ではないのです。

地域活性化とは、「稼ぎを作ること」です。観光で稼ぐ、都市で稼ぐ、分野は違っても理屈は同じです。稼ぐために皆で投資して事業を作り、事業に即した組織を作り、事業と組織に即した制度を作る。事業も組織もないのに、拙速に制度だけ作っても意味はありません。ましては自前で稼ぐ事業ではなく、補助金で活動する組織にしてしまうなんてもってのほかです。

別に国に制度を作ってもらわなくても、補助金がなくても、海外の取組みのエッセンスを理解し、日本で自分なりに取り組むことは十分にできます。かくいう私も学生時代に訪問した米国BIDの現場に刺激を受け、民間が投資して中心部を活性化する会社を熊本や愛知などで作り、さらに共鳴する仲間と各地で奮闘しています。

欧米における取組みを参考にするのに必要なのは、制度でも予算でもなく、民間が自ら自立心をもって「稼ぐ」ことと向き合う具体的な取り組みにほかなりません。

木下 斉 まちビジネス事業家

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きのした ひとし / Hitoshi Kinoshita

1982年東京生まれ。1998年早稲田大学高等学院入学、在学中の2000年に全国商店街合同出資会社の社長就任。2005年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業の後、一橋大学大学院商学研究科修士課程へ進学、在学中に経済産業研究所、東京財団などで地域政策系の調査研究業務に従事。2008年より熊本城東マネジメント株式会社を皮切りに、全国各地でまち会社へ投資、設立支援を行ってきた。2009年、全国のまち会社による事業連携・政策立案組織である一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立、代表理事就任。内閣官房地域活性化伝道師や各種政府委員も務める。主な著書に『稼ぐまちが地方を変える』(NHK新書)、『まちづくりの「経営力」養成講座』(学陽書房)、『まちづくり:デッドライン』(日経BP)、『地方創生大全』(東洋経済新報社)がある。毎週火曜配信のメルマガ「エリア・イノベーション・レビュー」、2003年から続くブログ「経営からの地域再生・都市再生」もある。

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