カルシウムイオンが「眠り」を導くことが判明 東大・上田教授のグループが初めて明らかに
徹夜した翌日、強烈な眠気に襲われるのはなぜなのか。
ヒトをはじめとする生物は、眠気と覚醒のバランスをうまく取りながら生命活動を維持している。だから、徹夜などで頑張って活動したあと、バランスを取るために眠気が引き起こされる。だが、頑張って起きていた分と眠気がどのようにカウントされてバランスが取られるのか、よくわかっていなかった。
また、睡眠物質が何なのかについても、長い間謎に包まれていた。これまでにも睡眠物質と思われるものは幾度か見つかったものの、関連する遺伝子をなくしたマウス実験などでもあまり眠りは変わらず、明確な答は見つかっていなかった。
通説とはまったく逆だった
今回、東京大学大学院医学系研究科の上田泰己教授(理化学研究所生命システム研究センター細胞デザインコア長を兼任)らのグループが、この睡眠と覚醒の制御にカルシウムイオンが重要な役割を果たしていることを明らかにした論文を著わし、米国の論文誌「NEURON」3月17日オンライン版に掲載になった。
これまで、カルシウムイオンは、細胞に入ると細胞が興奮する物質とみられていた。この通説とまったく逆に、カルシウムが眠りに関与することがわかったのは今回が初めて。
この研究はAMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)の革新的先端研究支援事業の1テーマとして行われたもの。
上田教授のチームは、まず神経細胞の平均的なモデルをコンピュータ上で作製して解析し、神経細胞の興奮にかかわるタンパク質を抽出。そのタンパク質を組み込んだモデル100万個を作り、その中から選んだ1000個を解析し、睡眠に影響の強い遺伝子群を絞り込んだ。
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