「8割水没した街」の再生が注目を浴びるワケ 米ニューオリンズは東北復興の手本となるか

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2005年8月に巨大ハリケーン「カトリーナ」の直撃を受けたニューオリンズ市。この10年で街の人口はハリケーン前の水準に戻りつつある (写真:きもん/PIXTA)
東日本大震災から5年が経った。「復興」の掛け声のもと、道路や公共施設といったインフラ整備が進む一方、復興庁によると今でも6万5000人が仮設住宅に暮らすほか、18万人が避難生活を強いられている。
今後の復興で重要になるのが、どんな街を目指すのかというプラン作りである。こうした中で参考になりそうなのが、米ルイジアナ州のニューオリンズだ。多様な文化を擁する観光都市として知られる同市は、2005年8月に大型ハリケーン「カトリーナ」の直撃を受け、街の8割が水没し、約1800人の命が奪われた。
あまりの被害に再生は不可能との見方もあったが、それから10年、ニューオリンズは再びエネルギーを取り戻しつつある。地元紙によると、平均給与水準こそ大きく伸びてはいないものの、同市への投資や知的産業的なベンチャーが増えていることで、雇用の数は着実に膨らんでいる。
注目されているのが再生の旗ふりを務める非営利団体、ブロード・コミュニティ・コネクションズ(BCC)だ。マサチューセッツ工科大学(MIT)で都市開発を学んでいたジェフリー・シュワルツ氏が2009年に26歳で立ち上げたBCCは、政府や民間企業から2100万ドルを調達して地元中小企業の支援に着手した。
2014年2月には「ReFresh(リフレッシュ)」と呼ぶプロジェクトを開始。高級食品スーパーで知られるホールフーズ・マーケットの実験的な低価格店を誘致すると同時に、地元の大学や政府と連携して健康的な料理の作り方やエクササイズを無料で学べる教室や、外食店での就労支援などを行う、地域住民の健康向上を目的としたコミュニティハブを開設した。
プロジェクトの中心が食品スーパーだったのにはわけがある。カトリーナ後、市内を横断するブロード・ストリートを境に、南側の地域で食料品店の撤退が相次ぎ、南北に大きな「食糧格差」が生じたためだ。リフレッシュが始まって以来、もともとの住民も、少しずつ戻りつつある。
今や米国だけでなく、世界各地から視察者が訪れるというリフレッシュから学べることは何か。起業家育成を支援するETIC.などが主催する東北復興を考えるフォーラム参加のために来日したシュワルツ氏に聞いた。
英文のインタビューはこちら

最初の5年は「回復」作業で手一杯

———カトリーナがニューオリンズを直撃してから10年、東日本大震災からは5年が経ちました。この5年の差は復興においてどの程度の違いをもたらしますか。

5年は非常に大きな違いを生む。被害に遭ってから最初の5年はリカバリー(回復)することに力を注ぐが、次の5年はそこからルネッサンス(復興)段階に移行する。つまり、最初の5年は被害の対応で手一杯だが、次の5年は被災地にどうしたら施設が増えて、人が戻ってくるのか、ということを考えられるようになる。

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