「8割水没した街」の再生が注目を浴びるワケ 米ニューオリンズは東北復興の手本となるか

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———BCCを始めたきっかけは。

地域が抱える問題を解決する方法は一つじゃないというアイデアが起点となっている。もちろん行政と手を携えることが望ましいが、各地域やコミュニティ、個人が地域の問題や課題解決に向けて起業家的な役割を果たせるのではないかと考えた。

BCCを立ち上げたのは7年前だが、最初の数年は本当に大変だった。プロジェクト立ち上げに時間がかかったが、当初から、ニューオリンズの再生には食品スーパーや中小ビジネス、地域住民が戻ってくることが必須だと考えており、それを実現するための方策をアクティブにやっていこうと思っていた。

40年以上投資がされていない地域もあった

———具体的にはどんな問題や課題を解決したいと考えていたのですか。

Jeffrey Schwartz/米ルイジアナ州ニューオリンズ出身。米ウィスコンシン大卒。ニューオリンズ市役所で働いた後、マサチューセッツ工科大学で都市計画と開発・住宅とコミュニティ経済開発の修士を取得。修士論文のテーマは、ニューオリンズにおける カトリーナで被災する前と後の新鮮な食べ物へのアクセス。2009年1月にBCCを創設し、代表理事に就任。ニューオリンズ市内の産業開発理事会、地域計画委員会、ライド・ニューオリンズ、トラスト・フォー・パブリック・ランドのニューオリンズ諮問委員も務める。

ニューオリンズはとても「悪いタイミング」でカトリーナに襲われた。この街には港があり、観光業のほか、石油やガスといったエネルギー産業が盛んだったが、産業の多様化は進んでいなかった。景気は決して悪くないものの、活気があるとは言えなかった。そういう停滞感がある中でハリケーンに襲われた。

BCCでは、浸水したビルの処理などハリケーン被害への直接的な対処だけでなく、それ以前からあった長期的な問題への対処もやっている。たとえば、私たちが活動している地域には過去40年間、何の投資もされてこなかったところもあるし、20年以上まったく新しい公園が整備されていないところもある。

短期的な問題への対処という意味では、たとえば食料品店を開いたり、新しい家を建てたり、新たなビジネスを呼び込んだりしている。

ーーこれまでの成果は。

私たちはまだ小さい組織だが、「小さくても強い」と思っている。設立から7年間で色々なことをやってきて、成功させている。一つは、中小企業の支援で、たとえば彼らが入居するビルのリノベーションや新しい看板の設置といった物理的な支援から、資金調達など業務的な支援も行っている。

また、地元政府と綿密に連携して新しい公園を作ったり、地域開発を促進するための規制変更や新たな規制づくりもしている。自転車レーンの設置や植樹、街の美化など、とても基本的だけれど街の再生には欠かせないことを手助けしている。

もう一つ、都市開発の中心になるのは、やはり民間企業や個人だと考えており、私たち自身がデベロッパーとなって、都市開発を進めている。

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