速報!東大合格者数ランキングと「塾歴社会」 東大に一番近い教室「鉄緑会」の強さの秘密
しかし鉄緑会に通う中学生たちは、目の前に東大医学部の学生を何人も見ることができるのだ。地方の中学生が高校受験のことで頭がいっぱいになっている時分から、東大医学部の学生と日常的に会話ができる。東大理Ⅲというブランドに対する余計な畏怖は取り除かれる。実際、鉄緑会出身者の1人は、「中学生のころに、東大医学部に所属していた講師が大学で使っているプリントを見せてもらって、『すげー! かっこいい!』と思って、理Ⅲに行く決意を固めた」と言う。
合格のための具体的な方法論はそこにある。それで成功した生の実例が目の前にごろごろといるわけだから間違いはない。カジュアルに、「自分も入れるんじゃね?」と思えてくる。理Ⅲがごく身近な目標に見えてくるのだ。この心理的なアドバンテージは計り知れず大きい。
私は開成や灘など、名門校と呼ばれる学校をよく取材する。そのような学校に共通するのは、東大合格に特化したカリキュラムが整備されていることではない。むしろこのような学校では受験に特化した授業は少ない。筑駒や麻布、桜蔭、女子学院も同様だ。
成功体験が非言語的に受け継がれる
それでも多くの生徒が東大をはじめとする難関大学に軽々と入っていくのは、「それが当たり前」という空気があるからだ。ギリギリまで部活や行事に熱中していても、最後は受験勉強に集中して東大に合格する前例を、目の前で見ることができるから、当然自分たちもそうなるものだと思い込む。先輩たちの成功体験が、学校の文化として非言語的に、後輩たちに受け継がれていくのだ。
それと似た空気が、鉄緑会にはある。「コツコツやれば東大理Ⅲだって誰でも合格できる」という成功体験が空気のように漂っているのである。この空気を毎週吸い込めることこそ、鉄緑会に通う最大のメリットではないかと私は思う。ただし、その恩恵にあずかれるのは、首都圏もしくは関西圏のごく一部の学力上位層だけである。まるで「秘密結社」のような閉鎖性が、鉄緑会の価値を一層高く見せる。
中学に入学する前の春休みから春期講習を開催し、6年後の東大入試のための勉強を始めるスタイルには批判も多い。ある有名進学校の教頭は「鉄緑会には何人も生徒をつぶされてきた。高校生になってから自分の意志で入るのならいいが、中1からあのやり方をすり込まれてしまうのは本当に困る」と憤る。
一方で、「そんな塾が東京と大阪にだけあって、しかも有名進学校に通っている生徒が優遇されているなんて不公平だ」と思う人もいるかもしれない。しかしいくらすごい塾だとしても、鉄緑会に入れば誰でも楽して東大に行けると思ったら大間違いだ。
トップ進学校に合格した秀才たちが、中学受験を終えたと思ったら休む間もなく山盛りの宿題に取りかかり、6年間コツコツ学力を積み上げていくのだ。世の中の中高一貫校生がいわゆる中だるみをしている間にも、努力を怠らないのだ。そこまでして東大を目指し合格できなかったらそれこそ気の毒というものではないだろうか。もちろん、そこまでして東大に行く価値があるのかどうかはまた別の話ではある。
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