「星のや東京」、温泉だけの利用がダメな理由 星野佳路代表に聞く「都市型旅館」の狙い

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――施設の詳細はどうなったのでしょうか。

建物は18階建て、客室総数は84室、レストラン、温泉大浴場があります。外観は西洋ホテルに見えるかもしれませんが、中身は一棟丸ごと日本旅館です。玄関で靴を脱いで上がってもらうために、床を40cmも上げています。入り口からエレベーターの中まで全部が畳敷きで、はだしのまま温泉のある18階に行くことができます。

温泉にはビジターは入れない

――温泉はビジターでも入れるのでしょうか。

大手町で建設中の「星のや東京」。2月中旬の撮影時にはすでに外観はできあがっていた

残念ながら、ビジターの方は温泉には入れません。

これは西洋ホテルと日本旅館の違いという、わりと本質的な話に直結しています。

西洋ホテルは、自分の部屋の中だけがプライベートで、部屋を一歩出たら、廊下からパブリックな区域になります。日本旅館も完全にプライベートなのは同じように部屋の中だけですが、施設の中はセミプライベートな空間で、宿泊者のための施設というのが大前提です。

つまり、日本旅館の玄関に入って靴を脱ぐ行為は、パブリックな外の空間からセミプライベートな旅館の空間に入る儀式そのもの。そこではちょうど自分の家に入るような心地よさが広がります。

だからこそ「星のや東京」では、寝間着として進化してきた浴衣を着て、温泉に行くことができる。館内は浴衣のままでOK、夏祭りの時期はそのまま大手町を歩いていただこうとも考えています。

――顧客のターゲットは?

大手町にあるので、ビジネスや観光目的のお客様が外国人であれ日本人であれ、来てほしいと思っている。家族連れにはちょっと大きい部屋を、一人客も多いと思うので、コンパクトな部屋も用意しています。

――開業に向けた準備はいかがですか?

2013年7月、東洋経済のインタビューに応じる「星のや軽井沢」の菊池昌枝総支配人(撮影:今井康一)

「星のや」の軽井沢、京都、竹富島を経験した菊池昌枝が総支配人に指定されました。彼らは今、「サービスチームでいかにして顧客満足度を東京でも高めるか」ということに取り組んでいます。私は菊池昌枝と軽井沢時代にずっと一緒に仕事してきました。その後、「星のや京都」立ち上げと総支配人をやってくれました。

京都がすばらしくうまくいった。その後、軽井沢の総支配人もやっている。どちらもREITに入っているので、実績が開示されています。客室数は京都が25室、軽井沢が77室、そして今度の東京が84室です。規模感から見ても、全然問題なく運営してくれると思います。

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