山口絵理子・マザーハウス代表取締役--カワイイが変える途上国、27歳「劇場経営」の突破力【中】

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ダッカには世界最大級のNGO、BRACの超高層ビルがそびえ立っている。11万人の職員、5億ドルの資金を擁して農業、乳製品、印刷、アパレル事業に進出。乳製品市場の国内シェアは2007年の20%から35%に上昇した。多くの就業機会を創出したことは間違いない。

だが、市場の「欲望」を媒介せず、優遇税制と「無私」の援助資金を推力として、NGOと民間の境界線がどんどんあいまいになっていったら、どんな産業構造が出来上がるのか。

ちなみに、バングラ政府とも親密なBRACには、中央銀行や国営航空会社のお偉方が天下っている。

山口が心ひそかに誇りに思うのは、ユニクロがバングラに1000人規模の大工場を立ち上げたことだ。ユニクロの責任者は「マザーハウスさんのようないいものを作りたい」と言ってくれた。山口の後を追って続々、日本企業が進出し、その大半が今やジュートのバッグを作っている。

ジュートが蘇り、バングラが「安かろう悪かろう」から抜け出すキッカケをつかもうとしている。これこそ、山口が望んだことだった。

競争が生まれ、マザーハウスも変わった。ジュートだけではなく、革製品・メンズにもアイテムを広げた。第2の生産地への進出も決断。「これがビジネスの面白さ」だ。

リスクを買い向かい 「ストーリー」を売る

昨年7月、大証ヘラクレスに上場したイデアインターナショナルは、社会派企業の先駆けだろう。デザイン力をコアに、福祉作業所や海外のNGOを支援する。

生産から販売まで手作りの山口とはスタイルが違うが、社長の橋本雅治は、山口が愚痴をこぼせる数少ない相手である。橋本が言う。「経営者の孤独がある。私はストレス解消に使われている」。 

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