山口絵理子・マザーハウス代表取締役--カワイイが変える途上国、27歳「劇場経営」の突破力【中】
実家の結婚式場の破綻処理、サラリーマンに復帰した先でのお家騒動、そして独立。橋本の半生は波乱万丈だが、その橋本が見ても、山口は「突貫娘」だ。「困難に飛び込んでいくのが好き。ブランドと言えるのは10億円になってから。(ネパールに進出するよりも)バングラを固めるべき、と言ったんだが」。
誰も彼もが「危ない」「ネパールはビジネスができる環境にない」と言った。山口は聞かなかった。「本当は、もっと早く行くはずだった。やりたいことが広がるばかり。まだまだ、できていないことばかり」。外務省の渡航禁止情報も非常事態報道も鵜呑みにしない。自分が現場に行ってみないと、始まらない。
現地の厳しさは想像を越えていた。突然、マオイストがストライキを宣言し、至る所で交通が遮断される。提携工場は生産開始の直前になって、契約拒否を通告してきた。
が、ネパールを断念することはない。山口はネパール伝統の生地をオリジナルに加工してバッグを作る。“再発見”したとき、伝統生地の工場は閉鎖の準備に入っていた。
うまくいけば、バングラのジュートのように、伝統の生地も蘇るかもしれない。「心配になっちゃうんです。一企業のやれることは限界があるが、何とかできないのかな。自分が知ったのに知らないフリできない。気持ち悪いな、と思っちゃう」。=敬称略=(下に続く)
(撮影:梅谷秀司)
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