シャープ買収先、みずほが鴻海を推す「必然」 メリットは株買い取りだけではない
経営再建中のシャープに対し、EMS(電子機器受託製造サービス)最大手の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業、官民ファンドの産業革新機構が、それぞれ出資案を提案している。早ければ2月25日にもシャープの取締役会でどちらかの案が選ばれる可能性があるが、事実上の決定権を握るのは大口債権者である、みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行だ。
このうちみずほ銀行は、今年に入り、鴻海案を支持する姿勢を鮮明にしていた。その直接の理由は銀行にとって、鴻海案のほうが機構案よりも経済的メリットが大きいことだ。
機構は両行に優先株の消却という債権放棄に加え、2015年6月に続き2度目となる債務の株式化(DES)という私的整理を求めている。一方の鴻海案は、優先株の簿価での買い取りを示しており、銀行にはほとんど”痛み”を求めていない。
みずほと鴻海の親密な関係
さらにみずほには、鴻海を支持する歴史的必然がある。鴻海はシャープ問題のはるか以前から、鴻海の大口取引先銀行なのだ。
鴻海の開示文書を基にすると、みずほの間で取引が始まったのは、2000年とみられる。みずほの前身銀行のひとつである、第一勧業銀行が東海銀行と共同で、まだ年商3000億円台の業容だった鴻海に向けて、40億円を金利0.55%で融資している。それまで鴻海は、バンク・オブ・アメリカからの借入金が多かったが、同年以降はみずほが取引先金融機関として、頻繁に文書に登場するようになる。
リーマンショック直前の2008年7月には、みずほが主幹事を務める12行で、鴻海の中核子会社であるフォックスコン・ファーイーストに向けて、1000億円超のシンジケートローンを組成。さらに直近の2014年12月期の開示文書には、金融機関からの長期借入金として8件が記載されているが、そのうち3件はみずほが主幹事を務めるシンジケートローンだ。この3件で長期借入金総額の75%を占めている。
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