ゆうちょ銀、マイナス金利で運用に手詰まり 預金獲得はむしろリスク、投信販売も中止に

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購入額も大きいゆうちょ銀行は、米国の投資適格の起債市場ですでに1割ほどのシェアを占めている。新規に発行される債券に申し込んでも、全額購入できないことが多く、人気の高い銘柄だと、2割程度しか買えないという。

金融市場の混乱は、もう一つの誤算を生んだ。2月22日に新規発売を予定していた「JP日米国債ファンド」が発売中止に追い込まれたのだ。多くがマイナス利回りとなっている日本国債を5割組み込むファンドで運用成果を上げるのは難しい。

ゆうちょ銀行としては、投資信託の販売手数料を伸ばすことが、収益拡大の重要戦略だ。そのために三井住友信託銀行や野村ホールディングスとJP投信を新規に設立。初の商品として、日米国債ファンドを含む2商品の発売を予定していたものの、出ばなをくじかれた。

今後は「期間の長い国債や社債、政府機関債、地方債、RMBS(住宅ローン担保証券)などの運用を増やしていく」(山田専務)。さらに、認可申請をして、PE(プライベートエクイティファンド)への出資もしていく考えだ。

コミットした配当額は維持

事態の急変を受けて、郵政事業の規制の方向性を決める郵政民営化委員会も、新たな認識を示している。増田寛也委員長は2月17日の会見で、「預金獲得はむしろリスクになっていく。ゆうちょ銀行は経営のあり方と業務のあり方をもう一度見直すタイミングだ」と指摘した。

ゆうちょ銀行は目先の対応策として2月9日に貯金金利を引き下げた。投資家に対しては、「コミットした2016年3月期25円と、2017年3月期50円の1株配当は、何としても実施したい。約4兆円ある有価証券含み益の活用も考える」と、山田専務は説明する。

思わぬ形ではしごを外された国策企業は、上場後いきなり試練に直面した。

「週刊東洋経済」2016年2月27日号<22日発売>「核心リポート02」を転載)

福田 淳 東洋経済 記者

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ふくだ じゅん / Jun Fukuda

『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などを経て編集局記者。

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